自分らしく生きる【ふたばらいふ】

湘南ケアカレッジの卒業生である小野田さんが、はじめての訪問サービスに入るということで、同行させていただくことにしました。

 

小野田さんは本厚木の北部にある「㈱ふたばらいふ」で1年ほど前から搬送サービスにたずさわっています。将来的には独立して介護タクシーをやってみたく、そのためには専門性の高い事業所で修行をする必要があり、「㈱ふたばらいふ」にやってきたのです。そして、せっかく介護職員初任者研修の資格を取ったのだから、訪問介護にもチャレンジすることにしたといいます。

 

先輩ヘルパーであり、サービス提供責任者でもある森さんの訪問に小野田さんが同行することになったところに、私も同行し取材させてもらうことになりました。

 

今回の取材を快諾していただいたのは西川さん。数年前に脳血管性の病気から九死に一生を得ましたが、その後遺症があるため、車いすを使ってひとりで暮らしています。しかも西川さんは、職業訓練校にも自走で片道1時間かけて通っているとのこと。ヘルパーさんがサービスに毎日入ることで、彼のその生活をサポートします。

 

今日は七沢にある神奈川県総合リハビリテーションセンターまでの通院介助の日でした。西川さんのご自宅まで迎えに行くと、すでに準備は出来ていたようで、そのまま3人でバス停まで向かいました。西川さんの車いすを小野田さんが押し、それを森さんが横で見守るという隊列で進みます。

 

よく見ると、西川さんは手袋をはめた右手で車椅子のタイヤを回し、右足で車椅子をこいでいます。その動きやスピードを邪魔しないように、小野田さんは車いすを押します。西川さんが言うには、介助者によって押すスピードが異なるとのこと。○○さんは速くて、○○さんはゆっくりといった具合に、介助者には分からないスピードの微妙な違いを、車いすに乗っている人は感じるといいます。


西川さんと小野田さんは何度か顔を合わせたことがあるそうですが、小野田さんにとっては初めての訪問サービスということもあり、やや緊張の面持ち。間に森さんが入っていることで会話はスムーズに流れてはいますが、まだ手探りの感は否めません。

 

そんな雰囲気を察してか、西川さんが「11月13日の金曜日って何の日か知っている?」とおもむろに尋ねました。

 

「13日の金曜日といえば、ジェイソンしか思い浮かびません」

と小野田さんが答えると、

「いやー、分かってないなあ。11月13日は、いいひざ(膝)の日だよ」

と西川さんが冗談めかした口調で答えたことで、一同爆笑、一気に場が和みました。

 

バス停まではけっこうな道のりで、アップダウンもあり、車通りも多い。状況に応じて、3人が縦に並んだり、横に並んだりして進んでいると、ようやくバス停が見えてきました。ただし、ここに来るバスの中でも、目的地である神奈川県総合リハビリテーションセンターに向かうバスは限られています。

 

他の目的地行きのバスが来てドアを開けてくれるのですが、森さんは両手で×をつくって、「乗りません」の合図を送り、律儀にもさらに両手を合わせて「ごめんなさい」のサインを送っていました。

 

ほとんどのバスは目的地に向かわないため断ってばかりだが、かつて乗りたいバスが止まってくれずに行ってしまったことがあったといいます。森さんは走って追いかけましたが、停まってもらえず、結局、その日は受診の予約時間に間に合わなかったそうです。憤りながらその話をする森さんからは、彼女のこの仕事に対する責任感がひしひしと伝わってきました。


介護者は見透かされてしまう

西川さんと森さんの間柄を表すと、ツーカーという表現が相応しいのではないでしょうか。西川さんは時折、ヘルパーに対して厳しい言葉をかけることがありますが、そこにはユーモアとそこはかとない愛情があります。こういう風に言ったら、このヘルパーさんはどう対応するのだろう、どのように返してくるのだろうと、相手を見ている、測っているのかもしれません。そして、そうしたやりとりの全てを楽しんでいる。介助者は見透かされてしまうのです。

 

バスに乗るときには、西川さんは車いすから降り、小野田さんがその車椅子を折りたたんで同乗します。2、30分ほどバスに揺られ、北へ北へと進み、終点の七沢で降りると、そこには大山の秋景色が広がっていました。

 

大山の壮大な自然の中に浮かぶ巨大な神奈川県総合リハビリテーションセンターに圧倒されている私を横目に、3人はいつものことといった具合に入口へ向かいます。森さんが受付を済ませ、診療の順番を待ちました。

 

待合室の廊下には、車いすに乗っている方や杖をついている方がたくさんいらっしゃいました。リハビリテーション科、(小児)神経科などが並ぶ病棟だけに、いろいろな病気や障害をもつ人々が来られるのでしょう。

 

ここにいると、普通に(というと誤解を招くかもしれませんが)歩くことができることが当たり前ではない気がしてきます。有り難いことをありがたいと思えるように、いつでも生きていきたいと思います。


待ち時間さえも楽しみと笑いに

病院とはそういうもので、待つ時間が長いです。西川さんは予約を入れて来ているのですが、それでもやはり待つことになります。診察室の前の椅子に座り、3人はひたすら待つ。すると突然、しりとりが始まりました。

 

「たこやき」

「きんめだい」

「石狩鍋」

「べっこう飴」

 

最初は食べ物縛りかと思いましたが、そうではないようです。西川さん、森さん、小野田さんの順番に回る。「み」で始まる言葉を小野田さんが探していると、「ほら、あの冬にこたつで食べるやつ」と西川さんが誘導します。「う」で始まる言葉が小野田さんに回ってくると、「ほら、あのお酒を飲む前や飲んだあとに飲むやつ」と森さんも「ん」で終わる言葉を発せさせて、待合室しりとりの洗礼を受けさせようと試みます。こうして待ち時間さえも楽しみと笑いに変えてゆく。西川さんの優しい配慮と生活の知恵だと私は思うのです。

 

そうこうしていると、西川さんの名前が呼ばれ、森さんと小野田さんも診察に立ち会います。西川さんの病状についても知っておかなければならないし、処方箋が出されるため、お薬についてもしっかりと把握する必要があるからだといいます。

 

この日も10種類近いお薬が処方されたようで、診察が終わってからすぐに、森さんは処方箋に見入りながら、お薬についてひとつ1つ確認し、メモを取っていました。

 

「毎日のように違うヘルパーさんが入るので、どのヘルパーさんにも分かるようにお薬の情報を共有しなければならないのです」と森さん。

 

西川さんは森さんのことを「笑いの神さまが降りてくるような人」と評するが、その仕事ぶりを見ていると、とても繊細な方でもあることが分かります。


診察が終わると、その後、地下の食堂で西川さんが食事を召し上がっていました。「㈱ふたばらいふ」では、レジャーや食事が目的の外出支援(ガイドヘルプ)以外では、利用者様からのご希望がない限り、食事を一緒にすることはほとんどありません。あくまでも通院を介助するのが仕事ということです。

 

 

食堂を出て左手にあるコインランドリーには、西川さんのつくった棚があるといいます。西川さんは大工であったそうです。見に行ってみると、たしかに棚が真っ直ぐに取り付けてありました。

 

帰りのバスから見えるところにも、西川さんがつくった家があるそうです。大工にとっては、棚から家一戸にいたるまで、全てが自分ひとりで責任を持ってつくる作品だといいます。


後ろ向きで前に進む

再びバスに乗り込んで、もと来たバス停で降り、そこから自宅まで戻る途中、西川さんがいきなりクルっと回転し、後ろ向きに坂を登り始めました。右足で車椅子を漕ぎ上げ、右手で方向を調整する。私はやったことがありませんが、かなり難しいし、大変だろうということは想像がつきます。

 

「後ろにある鉄のポールに気づかずに激突したことがあって、息が一瞬止まったよ」と言いながら、それでも西川さんは笑顔で進んでいきます。私はその姿を見せられ、「お前にできるかな」と問われているような気がしました。その頃、大切な人を失って気落ちしていた私にとっては、重すぎる挑戦でした。私にはできるのでしょうか。西川さんのように、後ろ向きで前に進むことが。

 

近くの薬局で薬を受け取ってから、ふたりは西川さんを自宅まで送り、薬の仕分けをします。そして、森さんがお薬手帳を西川さんに返し、西川さんがそれを布のケースに入れようとしたとき、私が最も印象に残っているシーンが訪れました。

 

西川さんが片手で入れようとするも上手くいかず、もう少しのところで入りそうなのに入らず、何度も試みているのを見ていた小野田さんはそっと手を伸ばし、ケースの入り口を少しだけ広げました。今度はきちんと入り、お薬手帳は無事にケースに収まった。

 

「ありがとう」

 

ボソッと、しかし感謝の気持ちが十分に込められた優しい言葉でした。

 

私たちは西川さんに別れを告げました。


民間救急サービスの草分け、でも大切なのは「接遇」

「㈱ふたばらいふ」の事務所に戻り、代表の森義信さんにお話しを聞くことができました。

 

実は「㈱ふたばらいふ」を訪れるのは2度目であったにもかかわらず、私はこの朝、また道に迷ってしまいました。ご年配の女性ドライバーさんと、ああでもないこうでもないと言いながら、同じようなところをグルグルと回って、結局最後は事業所に電話をし、ナビをしてもらいながらようやく近くまでたどり着くことができたのでした。

 

「うちの代表が道に立って待っていますので」と電話越しに言われ、辺りを見渡していると、そこにいたのが森さんでした。

 

「あの人のこと知っているわ。このあたりじゃあ有名だから」

 

タクシーの窓から森さんの姿が見えたとき、運転手の女性がそう言ったように、救急サービスの業界では名の知れた存在だそうです。もともとは救急隊長として救急車に乗っていた森さんは、救急車の適正利用と救急隊員の心身の疲労のはざまの葛藤に悩み、民間救急サービスと介護タクシーを自ら立ち上げることにしました。重篤な病気を抱えていても、何としてでも外出しなければならないときに、安心して利用してもらえるためのサービスです。


利用者さんにはターミナル(終末期)の方も多く、たとえば息子さんの結婚式にどうしても出席したいからといった切実な事情があり、しかし急変などに備えて専門的な知識と経験を持った救命士が同乗していることが望ましい。もちろん、あらゆる状況に対応しきれるように、寝台や酸素ボンベなどといった環境も必要となります。

 

そういったものを全て備えた上で、それよりも大切なものは「接遇」だと森さんは言います。ひとつの動作を行うときに、必ずひと声かけて、インフォームド・コンセント(正しい情報を得た上での同意)をとることで、安心と信頼を高めることができます。「㈱ふたばらいふ」では民間救急サービス(介護タクシーを含む)、訪問看護、そして訪問介護の3つの分野がありますが、どの分野の仕事であってもそれは同じだといいます。

 

在宅療養される方の増加や重症化が見込まれる時代においては、ホームヘルパーの事業所間や相談員だけではなく、必要に応じて医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの専門職や自治体、地域社会との連携や協力を得て、利用者をサポートすることが重要になります。医療・福祉・搬送の3分野が合わさって、自分らしく生きていくことをサポートする事業は、これからのあるべき姿だと思います。

 

同じ事業所に3つの分野が合わさっていることは少なく、「㈱ふたばらいふ」で働くことで、医療(看護師)や搬送(救命救急士)からのアドバイスも受けつつ、分野を超えた学びが得られることは確かです。

 

「㈱ふたばらいふ」では年に2回ほど、スタッフの面談も行っています。働き方や仕事の量やバランスに無理がないか、本人の希望を聞き、確認します。利用者様だけではなく、スタッフに対してもインフォームド・コンセントを重視しているということですね。

 


訪問介護は難しくない

「訪問介護は難しいと言われることもありますが、そんなことはありません」

 

「㈱ふたばらいふ」の管理者である岡島春奈さんは、力を込めてそう言います。採用担当者として企業説明会に臨んだとき、「学校の先生から訪問介護は難しいからやめておいた方がいいと言われた」と介護系の専門学校生から聞き、とても悲しかったそうです。

 

利用者様のご自宅にひとりで伺い、ひとりで判断して、1対1での関係性の中で介護するのは大変だし、怖いというイメージを持たれがちだが、実際はそれぞれの関係機関がチームでサービスを提供しています。裏を返せば、利用者さんの本来の暮らしに寄り添いながら、ひとりの人間同士として関わり合うことのできる素晴らしい仕事でもあるのです。

 

できるかぎり住み慣れた自分の家で過ごしたい。その想いは誰にとっても共通なものではないでしょうか。

 

たとえ自力で起き上がることができなくなっても、認知症になっても、障害があっても、残された命があとわずかしかなくても、人間は最期まで自分らしい生活がしたいものです。そのためのサポートをするのが在宅介護であり、訪問介護が担う役割は大きい。

 

にもかかわらず、在宅介護を担う事業所は慢性的な人手不足に悩まされています。

 

訪問介護にかかわる人がひとりでも増えてくれれば、その分だけ自宅で自分らしく生きることができる人が増えるのに。経験の有無にかかわらず、介護の仕事に本気で取り組んでみたいという方はぜひ、「㈱ふたばらいふ」を訪ねてみてもらいたいです。


採用情報

施設・事業所名称 株式会社ふたばらいふ
 サービス形態 障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護・移動支援)・訪問介護・民間救急
 勤務場所 事業場および利用者様のお宅(厚木市内)、移動先
 最寄り駅・アクセス

小田急小田原線 本厚木駅からバスで20分停留所より徒歩8

募集職種 訪問ヘルパー、民間救急ドライバー
雇用形態 *常勤(契約社員)・非常勤(パート)※非常勤は出社型と直行直帰型があります。※非常勤は出社型と直行直帰型があります。・出社型/事務所に出社し、訪問やその他業務を行います。・直行直帰型/利用者様宅に直接伺い、訪問終了後に業務が完了となり直帰します。ダブルワークや生活の合間に働きたい方におすすめです。
仕事内容

ホームヘルパー 〇利用者様のお宅に訪問して、以下の日常生活のサポートを行います。 ・家事援助、生活支援(調理・洗濯・掃除など) ・身体介護(食事・入浴・移乗、排せつなど) ・通院介助、移動支援(外出同行) 〇訪問業務に関する事務 ・記録、書類作成、ファイリング、簡単なPC入力など

給与

常勤/月収170,000~250,000円以上(経験・能力による) 非常勤/訪問時の時給1200円以上 訪問以外および研修時の時給930円(移動・事務等) ※直行直帰型(利用者様宅が勤務先)の場合は訪問1件あたり+400円。

*民間救急ドライバーは月収170,000~250,000円(経験、資格考慮)

勤務時間

常勤/8:30~19:30の間で1日7時間(シフト制) ※働き方、時間帯は応相談。例)9:00~17:00(うち休憩1時間)等  非常勤/8:30~19:00の間で1日2時間程度~OK ※出社型と、直行直帰型があります。

*民間救急ドライバーは9:00~18:00

休日

常勤/週休2日(シフトによる)  非常勤/シフトによる ※休日希望日を毎月事前申告していただき、シフト調整しています。

*民間救急ドライバーは土日祝、夏季、冬季

資格 普通自動車免許・介護職員初任者研修・ヘルパー2級・介護福祉士
見学 OK
夜勤 なし
交通費 常勤・非常勤(出社型)/通勤手当11000円上限で支給あり
社会保険 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険
車通勤 可(駐車場無料)
昇給 あり(能力、業績による)
選考基準・プロセス 履歴書・資格証をご持参いただき面接の上、採用可否をお知らせいたします。
求める人物像

人柄(誠実・傾聴できる方)と健康状態(心身)を重視しています。 女性の利用者様に対応するため、女性ヘルパーさんを募集しています。

その他  エプロン貸与、健康診断年1回、インフルエンザ予防接種費用会社全額負担、研修充実(会社負担) 個別面談年1~2回あり(スタッフの働き方の確認や各種相談を受けています)


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