ラの音を奏でる【友愛荘】

「私は信州の生まれだから」

「さすが田多井さん。お肌の艶がいいですね」

「またそんなこと言って。お兄ちゃんはかっこいいね」

「園長さんもほら、こっちへどうぞ」

田多井さんがそっと腰を右にずらし、施設長の藤田さんを丁寧に手招きします。

廊下のソファーは介護職員の瀬尾さん、田多井さん、そして施設長の藤田さんも加わりにぎわいを増しました。少し離れてカメラを構えると、それぞれの声が奏でるドレミファソラシドの「ラ」の音階の音が重なり、明るいハーモニーに聞こえてきます。

 

故日野原重明先生の言葉を記したかるたに、こんな1節があります。

“ラ音は心地よし、ラ音で伝わる、幸せの心”その解説は、こう続きます。

 

“楽しい時に出るハミングは、決まって「ラ」で始まります。挨拶や会話も、努めて「ラ」音で行えば、幸せの心が伝わります”

 

生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声は440ヘルツ辺りの「ラ」音だという研究発表もあるほど、「ラ」音と人の心情との結びつきは深い所縁が見えます。


「こんにちは」

施設長の藤田さんの挨拶は、快活という言葉そのものを音にしたような気持ちの良い響きです。気づくと、釣られて私も普段の1.5割増しに声を発していました。もっと具体的に表すと、演歌歌手の水前寺清子さんが私としてはぴったりと当てはまるイメージです。

 

「声が大きいとはよく言われますね。内緒話ができなくて困ったものです」ちょっぴりいたずらっぽく朗らかな笑い声に、あっという間に緊張はほぐされました。

 

ここは特別養護老人ホーム友愛荘。町田市にキャンパスを構える桜美林大学のすぐそばに位置しています。昭和49年に新設した建物は、ボイラーストーブが昨年まで現役で稼働していたりとレトロな趣が残っています。映画のセットに使われていそうな雰囲気は味わい深く、平成生まれの私の目には物珍しく映ります。


あなただけの夢を叶えたい

友愛荘では、ご利用者さん1人ひとりと担当職員がじっくりと相談をして、施設のイベントとは別に夢を叶える企画を行っています。

 

「大きなイベントはどうしても、自由度の高い方が参加者の中心となってしまいます。特別養護老人ホームに入居される方は、寝たきりの方もいます。ご利用者さんみなさんの希望を叶えたいと思い、夢プロを始めました」

 

去年スタートした「小さな夢叶えようプロジェクト」通称「夢プロ」は、1年でほぼ全員のご利用者さんの夢を叶え、今年もその歩みを続けています。

 

「自宅に帰りたい」と希望されたご利用者さんのエピソードがとても印象に残っていると、瀬尾さんは教えてくれました。

 

「玄関前の階段を職員二人がかりで車いすごと抱え上げて家に入り、リビングで奥様と過ごされたとき、『手すりもないし、なかなか帰って来てもらいたくても出来なかった。ありがとう』と、奥様から感謝されたこと。施設に戻ってきても、ご利用者さんがすごく喜んで『ありがとう』と言ってくれました」

 

「こんなに喜んでくれるんだなぁと驚きました。施設の中では見たことのない姿でしたね」瀬尾さんはそう振り返ります。


廊下に飾られた記念写真を見ると、「フランス料理を食べたい」「フェイシャルマスクをしたい」「本屋に出かけたい」「昔のようにお囃子をしたい」と、どれもその人の趣味や嗜好がうかがえる夢が並んでいました。満足そうな表情が写真からあふれんばかりです。

 

どんなに小さな夢であっても、それまでの人生で大切にしてきた何かがその後ろには隠れています。その固有の瞬間をご利用者さんと共に過ごせることが、職員にとっても得難い体験になるのでしょう。



全部をひとりでやらなくていいよ

「甘いカボチャのサラダですよ。いきますよ」

 

食事を目でとらえるゆっくりなスピードに合わせ、ご利用者さんの視界を亀が歩くようにスプーンが口元まで進みます。じーっと、横山さんを見つめるご利用者さんに分かりやすいように横山さんが口を開け、一瞬口元の緊張がゆるんだ瞬間にさっとスプーンを口へ運ぶ。

 

流れるように一連の動作がつながり、食事が進んでいきます。


友愛荘で勤めて3年目になる横山さんは、高めのトーンの伸びの良い声質で、若々しさがその声にのって伝わります。

 

「『今日は横山さんいるんだね』と、遠くの居室のご利用者さんも声だけで出勤していることを確かめてくれます。活舌よく、聞き取りやすい声で話すことは気を付けています」

 

ポップなリズムに乗せて気力が湧いてくるように感じたここにも、「ラ」の音がありました。


今の元気な姿からは想像がつきませんが、横山さんは体調をくずし休職したことがあったそう。

 

「休職して迷惑をかけてしまって、もう辞めるしかないと思いました。けれど、施設長の藤田さんが『辞める選択も、辞めないで働く選択もあるよ』と示してくれたんです。おかげで、『もう一回働いてみたい』と戻ることができました。戻った時にも、職員さんが嫌な顔せずに迎え入れてくれて『抱え込む前に、いつでもいいから連絡してね』と、気遣ってくれました」

 

ここがターニングポイントとなり、横山さんの働く上での心もちが変わったと言います。

 

「以前のように、くよくよ悩まなくなりました。休職する前はミスをしてしまうと、『あ~もうだめだ』とすぐにマイナス思考になってしまって、内に内にと入り込んでいました。1人でいろいろとやろうとして、結果的にこなしきれず慌てていたら『全部を一人でやらなくていいんだよ』と先輩職員が気にかけてくれました」

 

責任感が強い人ほど、自分ひとりで何かをしようとしてしまい、行き詰ってしまうことがあります。声をかけあい、一緒に働く人がいるのだと思い合える“チーム”を意識できると、頑張りすぎてしまうウィークポイントも強みに変わるはずです。

 

「声をかけあうって大事だと思っています。元々、企画したりすることが好きなのでフロアーで働く職員さんを誘って、定期的に“飲みニケーション(飲み会)”を開いています」

 

盛り上げ上手な彼女の手にかかれば楽しい時間が過ごせそうだなぁと、夢想します。

 

「戻りました」

よく通る声が食堂に響き、職員さんやご利用者さんに出迎えられ、昼食の始まった食堂の輪へすっと彼女は戻っていきました。


「横山さんがあんな風に考えるようになっていたなんて、誇らしい。こういう機会も良いものですね」藤田さんが嬉しそうにつぶやきます。3年前を知るからこそ、彼女の成長ぶりがよく分かり、頼もしくも感じるのでしょう。

 

歴史ある友愛荘は、平成33年に町田市南大谷に移転する転機をひかえています。まだまだ先の話というわけでもなく、月日が経つのは意外と早いものです。少しずつ準備を進めるため職員の採用も始めていくそう。

 

友愛荘の至る所で耳にした「ラ」音、それはご利用者さんやご家族、職員、あらゆる人の幸せを奏でた音色でした。馴染みの職員を見つけた時にふと出たほほえみ、たわいのない昔話にうなづく相槌、一つひとつの「ラ」音が響き合い、メロディーが紡ぎだされていくのです。


採用情報

施設・事業所名称 社会福祉法人友愛十字会 特別養護老人ホーム友愛荘
 サービス形態 特別養護老人ホーム
 勤務場所

東京都町田市図師町989(2022年4月町田市南大谷移転予定)

 最寄り駅・アクセス

町田駅よりバス 忠生4丁目下車徒歩2分 淵野辺駅からバス 桜美林東下車徒歩5分

募集職種 介護職員
雇用形態

①正規職員

②パート

仕事内容

ご利用者さんの生活全般に関わる仕事です。施設の定例行事のみならず、1人ひとりの夢を叶える企画も進行中。平成33年の移転改築に向けて、準備を進めています。

給与

①250,800円~275,800円(諸手当、夜勤手当5回分含む)内訳→基本給172,300円~、交付金手当(処遇改善手当)26,000円/月、住宅手当0~25,000円/月、役割手当20,000円/月、夜勤手当6,500円/回、【扶養手当、超過勤務手当、特別手当(年末年始手当)、職員採用協力手当は該当者へ支給】

②1,200円~1,250円/時(処遇改善手当150円/時含む)

勤務時間

①早番7:30~16:30、日勤8:45~17:45、遅番9:45~18:45、夜勤17:00~翌10:00

②早番7:30~16:30、日勤8:45~17:45、遅番9:45~18:45、 または7:30~18:45 の間の5時間以上

休日

①年間休日129日(夏季休暇3日、年末年始休暇6日含む)

②シフト制

資格 初任者研修修了者以上
ボーナス

①年2回(合計4.4カ月)

②なし

夜勤 月に5回程度
交通費 40,000円まで実費支給
社会保険

①健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、退職金共済

②労災保険

車通勤 可(※駐車場自己負担)
昇給 ①年1回(評価に応じて)
見学 OK
その他  


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