何万回のうちの1回であっても【道志会老人ホーム】

平均寿命(女性の場合87歳)まで生きられると仮定して、1日3食ずつ数えていくと、ひとりの人間が生きている間に828万8055回、食事をする機会があります。

 

忙しい朝にパンを慌てて頬張っても1回、大切な人とレストランでコース料理に舌鼓をうっても1回。日々の生活の中で、この食事が自分に残された生涯の中で何回目の食事になるかなんて、気にも留めないでしょう。けれども、特別養護老人ホームで暮らすご利用者様にとっては、今日その食事が最後の1回になるかもしれません。

 

海老名駅からバスに20分揺られ、綾瀬市役所のすぐそばに、特別養護老人ホーム「道志会老人ホーム」はあります。それに並び7年前にオープンした「有料老人ホームヴィラ城山」も建っています。


季節に採れる地元の食材を食べてもらいたい

「ちょうど、昼食の頃に来てもらえてよかったです。道志会で特にこだわっているのはなんといっても食事なんです。まずは畑を見に行きましょう」


相談員の大滝さんに案内していただいたこだわりの畑には、区画ごとに白菜や水菜などの緑の野菜や、里芋やタケノコ芋などのイモ類、あらゆる野菜が葉を茂らせ育っています。


この立派な畑の手入れは、専門の施設職員はもちろんのこと、ご利用者様の家族からなる家族会の方々の力に大きく助けられているのだそう。

 

「理事長でもある園長が、『季の食べ物、地の食べ物を食べてもらいたい』と常々話しているので、畑を耕し、道志会で提供する食事には輸入食品を使っていません。この畑も無農薬にこだわっています。とはいえ、予算を考えると大変なようで、献立調整は管理栄養士さんの頑張りどころでもあります」

 

「今年の夏は冬瓜が大豊作でした。どれもこのくらい(大人の顔2つ分ぐらい手を広げて)大きく育って今もせっせとメニューに並ぶのですが、濃いめの味付けが好みのご利用者様からは『また冬瓜?』なんて声も聞かれたり・・・」と、笑う大滝さん。

 

季節の移ろいに合わせていただく旬の食べ物は、旬でないときに比べ、味も濃厚になり、より美味しく感じます。旬の食材を重宝する文化は、それらを食べると縁起が良く長生きもできると言われていることに深く起因しています。美味しいものであればおのずと箸が進み、食べることができれば元気になり、それは当然の帰結だと思います。


「食用菊はあと少しで収穫できそうだなぁ」

 

雑草をむしりながら、畑の手入れを専門とする職員の川村さんが大滝さんに話しかけます。

 

「収穫したら、ご利用者様にリハビリも兼ねて花びらを分けるのを手伝ってもらい、お浸しを作ろうと思っているのですよ」

黄色い花びらを使って作る一品は、秋の訪れの知らせになります。


食事を通して見えるもの

施設に戻ると、調理室から届けられたばかりの昼食が食卓にならんでいました。さわらの西京焼きの味噌が香ばしく、カボチャ煮や大根の酢の物など、正統派の和食に思わずお腹が鳴りそうになります。


2階から4階までなる特別養護老人ホームには、窓からの光が多く差し込む食堂が各階にあります。食事時にはご利用者様や職員が集まり、にぎやかな時間が始まります。

 

食堂をぐるりと見まわすと、職員さんの服装が違うことに目が留まりました。白衣の職員さんやワイシャツにパリッとしたパンツ姿の方、ポロシャツにエプロンを付けている介護職員らしい格好の方、それぞれの見た目の印象が異なります。

 

「特に決まりも担当もありませんが、食事の時にはその時に手が空いている他職種の職員も、ご利用者様の食事介助に入ります。看護師から機能訓練指導員、管理栄養士、ケアマネージャー、相談員まで全員総出ですね」


他の施設では見かけない光景に、なぜ介助に入っているのか気になり、声をかけてみると、

 

「たしかに機能訓練指導員が食事介助なんて、僕ぐらいかもしれませんね。けれども、訓練の時間ではなくても、食事を介助することで食べやすい座位がとれているのかを見ることができ、足が床につかず座位が傾いてしまうご利用者様がいれば、車いすやテーブルの高さを変えようかと考えることもできますから」

 

と、山口さんは教えてくれました。らし、介護職員が気持ちよく介護ができるのも、岸川さんのように丁寧に掃除をしてくれる人がいるからです。施設はありとあらゆる人たちがそれぞれの役割という車輪を回すことで、走っています。


手のしびれでスプーンが持ちづらく、食べるのが億劫になり、手が止まっていたご利用者様の介助に入る大滝さんもこう教えてくれました。

 

「家族のための相談員だと考えています。ご家族にも普段のご利用者様の様子を見ていただきたくて、積極的に声をかけて食事の時に会いに来てもらったりしています」

 

単なる人手不足が原因で食事介助に駆り出されているわけではなく、それぞれの異なる視点を持つ専門職が、自らの目線で、食事という人間にとって不可欠な営みを考え、目的をもって支えていたのでした。

 

他職種連携という言葉は、耳にたこができるほどよく聞きますが、言うほど簡単なことではなく、絵に描いた餅になりがちです。全員同じ食事介助をしているように見えても、機能訓練指導員が介護職員として食事介助をするのと、機能訓練指導員が機能訓練指導員として食事介助をするのとでは雲泥の差が生まれます。

 

そういった意識の高さに加え、自然と言葉を交わし合い冗談を言い、ご利用者様と食卓を囲む雰囲気から、職員間の関係性の良さがにじみ出ているように感じました。初対面の私の質問にも、全ての職員が丁寧に自らの言葉と感性で語ってくださり、もっといろんな話を聞いてみたいと思わずにはいれない魅力がありました。


一緒に働いてみたい人

その施設で働いてみたいと思うきっかけは、介護の質や設備、建物の新しさだけではないはずです。多くの決め手になるのは、「人」です。

 

ご利用者様の表情はもちろん、案内をしてくれる職員さんや働いている職員さんを、施設見学者や実習生はとてもよく見ています。職員さんの姿に未来の自分を重ね合わせ、「あんな風に自分も働きたい」と魅力的に映った瞬間に、自らの進みたい方向が見えてくるのだと思います。


ご利用者様が筆を操り書いた書道の作品をめくりながら、面白い表現を見つけ微笑む金子さんも、そんな一人です。

 

「専門学生だった頃の現場実習で1か月、道志会老人ホームにお世話になりました。その時、夜勤で担当についてくれたのが仁田さんでした。色々な話を聞いてくれて、おかげで不安だった夜勤を乗り越えることができました。いざ、就職先を考えた時に、道志会老人ホームが真っ先に頭に浮かんできました」

 

姉のように仁田さんを慕う金子さんと、この3年間で介護職として成長した金子さんを微笑ましく見守る仁田さん。一緒に働いてみたい、頼りがいのある先輩の存在は、これからも変わらず心の支えになるはずです。


最後の1回に関わるということ

家庭ごとにある、ずっと食べ続けてきた「おふくろの味」は、どこか懐かしく、私たちをほっとさせます。道志会老人ホームといえば、それは赤紫蘇(あかしそ)ジュースです。自分たちの畑で育て、管理栄養士さんが毎年新たに収穫した赤紫蘇を、理事長秘伝の作り方で丁寧に漬け込み、赤紫蘇のエキスが染み出たシロップが出来上がります。

 

夏祭りの準備の際には、汗だくで働く職員や家族会の方々に、赤紫蘇シロップをかけたかき氷をふるまいます。それを食べると酸味と甘さが体に染みて、疲れがすっと引いていくように感じるのだそう。「昔はよく飲んだわよね」と言いながら、ご利用者様もシロップを水で薄めた赤紫蘇ジュースをごくごくとのどを鳴らして飲んでくれます。


「ぜひ味見してみてください」と、私にも用意してくれた赤紫蘇ジュースを飲んでみると、ほんのりと甘くてまろやかで優しい酸味が、ほっと一息つかせてくれました。

 

ぽつりぽつりと、赤紫蘇ジュースにまつわる話を教えてくれました。

 

元気だった頃、赤紫蘇ジュースをとても好んでくれたご利用者様がいました。春夏秋冬と日々を重ね、老いていく自然な流れの中、いつしか食事が進まなくなり、飲み物も受け付けなくなり、うとうと眠っている時間が増えました。少しでものどを通るものがあればと、好物だと話してくれた赤紫蘇ジュースを口に含んでもらうと、しばらくぶりに美味しそうに飲んでくれたのだそう。

 

それからは、その方のために水分補給用として赤紫蘇ジュースが用意されるようになりました。そして、遂にその好物でさえも飲めない日がやって来て、いよいよ入院という運びになりました。誰も口には出さずとも、そのご利用者様と過ごす最後の時間になることを予感せずにはいれないほどになっていました。

 

送り出す朝、甘めに漬けておいた赤紫蘇シロップを水で割り、少しだけでも飲んでくれたらと用意して口に含んでもらうと、飲めず食べれずだったのが嘘のように、コップ1杯の赤紫蘇ジュースを飲み、目をぱっちりと開けて「美味しい」と言ってくれたのだそう。「いってらっしゃい」そう言って、病院へと見送りました。

 

その時の、管理栄養士の菅原さんの一言が、今でも胸に残っていると大滝さんは言います。

「最後に口にする食事に関わらせてもらえる仕事なんて、他にはないよね」

 

ケアマネージャーの坂田さんは、また別のご利用者様について、こう振り返っていました。

「もう飲み込む力も残っていなかったご利用者様に『マクドナルドのフライドポテトが食べたい』と言われたとき、どうすることも出来ませんでした。どうにか、食べてもらえる方法はなかったのかと今でも思います」


食事に関わらず、介護の仕事は想像しきれないほどの時間を生きてこられたご利用者様の最後の1回やひと時にかかわるものです。何万回のうちの1回であっても、その1回の今、その瞬間にどれだけの想いを注げるかで、輝き方は変わるのでしょう。

採用情報

施設・事業所名称 社会福祉法人道志会 道志会老人ホーム、 有料老人ホームヴィラ城山
 サービス形態 特別養護老人ホーム 、有料老人ホーム
 勤務場所

神奈川県綾瀬市早川城山2-11-3

 最寄り駅・アクセス

小田急線・相鉄線・相模線海老名駅よりバスで20分 城山公園バス停下車 徒歩5分

募集職種 ケアワーカー
雇用形態

①正職員

②パート職員

仕事内容

入居されているご利用者様の生活にかかわる介護です。生活の介護の中でも、特に食事に力を入れています。料理の味だけでなく、ご利用者様をよく観察し適切な介護を、他職種と一緒に考えながら提供していきます。

給与

①基本給190,000円~250,000円、処遇改善手当10,000円/月、夜勤手当6,000円/回、扶養手当(配偶者のみ)10,000円/月

②初任者研修修了1,050円/時、介護福祉士1,100円/時、夜勤専従24,500円/回(17:00~翌10:00)

勤務時間

①7:00~16:00、9:30~18:30、10:00~19:00、 17:00~翌10:00

②9;00~18:00(週3日、1日8時間勤務以上で相談)、夜勤専従17:00~翌10:00

休日

①週休2日制 年間117日(2018年度)

②週休制

資格 初任者研修修了者以上
ボーナス

①年2回合計4~5カ月分(前年度実績)

②寸志(初年度5,000円)

夜勤 月平均6回
交通費 実費(上限なし)
社会保険

①健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、財形

②健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険(規定により)

車通勤 マイカー通勤可(無料駐車場有り)
昇給 ①あり(前年度実績5,000円~) ②あり(前年度実績50円~)
見学 OK
その他  


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