あの笑顔にまた会えることが嬉しくて、カメラを片手に、遠足に出かけるような気持ちで取材に伺いました。「でいほーむ・いろり」は定員10名の小規模型デイサービス。どこからどう見ても普通の住宅にしか外からは見えません。玄関にある看板と入口の前に駐車されている車いすマークのついた送迎車のみが、ここがただの住宅ではないことを語っています。
ピンポーン!呼び鈴を鳴らすと、「はーい!お待ちくださいね」とあの声が。「どうぞ、お入りください」とドアが開いたその先に、あの人が待っていてくれました。「でいほーむ・いろり」の施設長の藤巻さん。太陽みたいな笑顔とはこのことを言うのだと思うほどに、私を温かく包み込んでくださいます。
新築した一軒家の1階がデイサービスとなっています。一軒家を借りてデイサービスを行っていた頃、「ここがもっと広ければいいのに」、「ここにこれがあれば便利なのに」と不便を感じることが多かったそうです。
物理的な制約がなければもっと介護がしやすいと建物の設計段階から携わり、複雑な法制度に振り回されながらもなんとか建てた、想いの詰まった家が、「でいほーむ・いろり」です。
家庭的に作られていますが、かといって普通の住居をただ単に改修したわけではありません。ご利用者さんにとっては暮らしやすく、働く職員さんにとっては介護をしやすい、両方の目線をもって建てています。そのこだわりを聞くと、おそらく2時間の取材では語り尽くせていないのではと思わされるほど、実に細かなものでした。
その中でも一番のこだわりのある浴室は、扉が開いた瞬間に青森県産のヒバの木から作られた浴槽の香りが流れ、介護施設特有の自分だったら絶対に入浴したくない臭いや汚れのある空間はそこにはありませんでした。カビや髪の毛の残りがない床や壁から、毎日毎日丁寧に掃除をしている職員さんの姿が鮮明に見えた気がしました。
浴槽は大きさが異なるものが2種類用意されており、ご利用者さんの体型や身体機能によって、入りやすい方を選択できるようになっています。小柄なご利用者さんが大きな浴槽に入ると、どうしても浮力によって身体が浮いてきて危険です。そんなご利用者さんには、安心してゆっくりくつろいでもらえるよう、すっぽり身体が収まる小さめサイズの浴槽を使っていただきます。
手すりの付け方ひとつをとっても、こだわりが見え隠れします。ご利用者さんに立ってもらって身体を洗う際つかまりやすいように、鏡の両脇に波型の手すりが付いています。さらに、椅子から立ち上がりやすいように、鏡の下に横付けの手すりもあります。
また、その手すりに色を付けておくことで、「赤い手すりにつかまってください」とお願いできるよう、一目で分かりやすくする工夫が施されています。さらに、いろりで入浴されている方は自宅では入浴されない方が大半です。いろりでの入浴は、自宅で入れるようにするための練習の場であるご利用者さんは少ないのです。
手の届くところをご利用者さんに洗ってもらったりはしますが、シャンプーを頭に付けたり、泡立てたボディータオルは職員が準備してご利用者さんに手渡します。そのため、あえてシャンプーなどを置く台はご利用者さんが座る位置の前には設置していません。
介助をする職員の立ち位置の前に高めに設置することで、立って介助をする職員が屈まずに使用できるようにしています。単にご利用者さんの自立を目指せばよいのではなく、ご利用者さんが本当に望まれていることを大事にひとすくいずつ汲み取るように介護をしています。
トイレにおいて画期的だと私が思ったのは、貯水タンクの真上に設置されているトイレットペーパーホルダーです。
介護の経験がある方であれば、「たしかにこれは便利だ」とすぐに納得できるのではないでしょうか。排泄の介助をする際、ご利用者さんに立ち上がってもらう前に必要と思われる量のペーパーを用意しておくべきなのですが、「しまった、足りない・・・」となってしまったあとに座り直してもらうことも、ご利用者さんの目の前を遮ってしまうこともなく、職員さんが立っている位置から自然と手が届く場所がまさにこのタンクの真上なのです。
たったこれだけの工夫でご利用者さんも安全であり、かつ職員さんも介助がグッとしやすくなるのです。
「でいほーむ・いろり」は第2のわが家です。ご利用者さんもご自宅でくつろぐように過ごしています。テレビを見たり、お茶を飲みながら職員さんとお話をしたり、昼食後となればベッドや畳敷きの小上がり、足をのばして座れるソファーにてお昼寝をする方までいます。
大きなデイサービスにあるような機械を使ったリハビリ訓練も、懐かしい歌が流れるカラオケもありませんが、思い思いの時間を過ごし、気の合う者同士で語り合う空間があります。
ご利用者さん:「この色は…」
職員さん:「そうだね」
ご利用者さん:「そうそう、ようよ、なっ」
職員さん:「そうよ、ぐっと」
お笑い芸人のダチョウ倶楽部さんのネタかと思えるような、決めポーズが出てきました。
実はこれは職員さんしか知らないご利用者さんの口癖で、そういったご利用者さんのチグハグだけれど思わず笑ってしまう瞬間を皆で共有できる、こころと時間の余裕があるのです。
やるべきことが詰め込まれ、次から次へとせわしなく、スケジュールに追われる1日ではなく、同じことの繰り返しのようでいて、言葉遊びのような話に笑い合える、大事な時間が流れているのです。
気持ちの良い天気に誘われ、近くのショッピングセンターで買い物を楽しんでこられたご利用者さんもいました。「ゴールデンウィークに孫が会いに来るから、お菓子を買ってきたの」と嬉しそうに買い物袋の中身をみせてくれました。
どういった人に一緒に働いてほしいのか藤巻さんに伺うと、「気づける人ですね」と迷わず答えてくださいました。
高い介護技術や知識よりも、まずはご利用者さんの様子に気付けるかどうか。大規模なデイサービスのように職員さんのその日の担当も決まっておらず、それぞれが必要なことに気づいて取り組むため、その場その場で「今なにをすべきか」を考えられることが何よりも大事です。
あるご利用者さんのズボンのすそのほつれを見つけた藤巻さんが、縫い物の大先輩方に見つめられながら、お裁縫を始めました。
「今は手先が見えないけど、昔はチョチョイと出来たもんだよ」
と次の誕生日には102歳になるご利用者さんが話すと、
「(藤巻さんは)なんでもやってくれるから助かるよ」
と言葉が行き交います。
まるで娘や孫に話すかのような、家族の会話に聞こえました。
こうした藤巻さんや職員さんとご利用者さんの関係性から生じる温かな雰囲気に包まれています。くだけた呼び名でご利用者さんをお呼びすることや、ごく普通の家にいるかのような設備を用意するだけでは、関係はできあがりません。
職員さんも介護職として一線を引いているというより、一緒に語らいながら、必要なところを手助けしているだけに感じさせます。そこには介護の仕事に携わるプロとしての意識があり、仕事をしているよう見せません。
ご利用者さんひとり一人にちょうど合う、心地よい距離感や空間があるのです。看板娘を名乗る最高齢のお嬢さんや、物静かに他の方々を見守っているお父さん、笑顔を絶やさずに周囲の人を笑顔にすることが上手なお母さん。藤巻さんを一家の大黒柱として、職員さんにもご利用者さんにも、家族の一員としての役割があるように見えました。
いろりには、ひとつの家族のかたちがあるのです。
施設・事業所名称 | でいほーむ いろり |
サービス形態 | デイサービス |
勤務場所 | 町田市根岸1-1-3 |
最寄り駅・アクセス |
町田駅・淵野辺駅よりバスにて 上の原下車 徒歩5分 |
募集職種 | 介護職員 |
雇用形態 | パート・アルバイト |
仕事内容 | 送迎・調理・介護全般・レクリエーション・その他 |
給与 |
960円/時~、980円/時(介護福祉士) (資格、経験によります) |
勤務時間 |
8:00~17:30の間で8時間以内 |
休日 |
週休二日以上、定休日12月29日~1月3日(29日は大掃除あり) |
資格 | 普通自動車運転免許 初任者研修修了者以上 |
ボーナス | 決算期(8月)に支給あり |
夜勤 | なし |
交通費 | 10,000円/月 上限 |
社会保険 |
雇用保険・社会保険あり |
車通勤 | 車種により要相談 |
昇給 | あり |
選考基準・プロセス | 面接にお越しください |
見学 | OK |
その他 |
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