自然に笑える場所へ【今宿ホーム】

「やっぱり、ここにいたんですね」

 

土居さんが、ほっとしたように口元をゆるめてご利用者さんに近寄ります。

「きっとここにいると思ったんですよ。夜も2~3時間眠ると起きてこられて、廊下をぐるぐると歩いた後、いつもここに戻ってこられますよね」

 

数分前まで、活気づいた食堂にいたはずのご利用者さんがここにいるのには、理由がありました。

 

さまざまなアングルを求めて、カメラを片手に食堂の中を歩き回る先々、なんだか視線を感じるなとそのありかを探して振り返ると、彼女はすーっと遠くを見るような目をして私を見ていました。

 

私が近寄ると、座っていた彼女はすくっと立ち上がり、テーブルを離れようとします。ほとんど完食しているお皿が並ぶ中、お麩がぷかぷかと浮かんだお味噌汁だけ、手を付けた様子がありません。

 

「お味噌汁残っていますよ。味見しておきませんか?」

とさりげなく、もう一度座ってもらい、スプーンを手にしたことを見届け、食堂に目をやり、彼女に背を向けました。

 

歩き出そうとしたその時、またもや気配を感じてふりむくと、彼女は私のすぐ目の前に立ちはだかっていて、そのやりとりに思わず「ふふっ」と笑ってしまいました。「どうされました?」とたずねても、彼女は何を言うまでもなく、見知らぬ客人に対する興味を目に抱いて、そこに立ち続けていました。

 

「面白い人だと思っているのかな」と思いつつ、よく目を見てみると、彼女の目は私だけではなく、そのずっと先にピントが合っているように見えてきました。不思議に思い、立ち位置を彼女の横にずらし、同じ目線に合わせてみると、その視線の先には、食堂からご利用者さんの居室が並ぶ廊下が見えます。

 

「お部屋に帰りたいのかな?」と思い、声をかけようとした瞬間、音もたてずに彼女の右手が私の左腕の手首を包みました。ふくよかで程よく温かい手からは想像もつかないほどのアンバランスな強さでぐっと引っ張り、食堂を出て、廊下を進んでいきました。


彼女に手を引かれながら「どこに行くのだろう?」と疑問が頭をよぎるのもつかのま、小さい窪みのような空間にて彼女の足が止まり、その奥にある壁一面に広がる大きな窓に吸い寄せられるように足をすすめ、窓の前でぴたっと彼女は歩みを止めました。施設の裏にある山に面した窓には、日も暮れた夕食時、木の影と遠くにぼんやりと白い灯りが映っているだけ。

 

「何を見ているのだろう?」

 

目をこらして見ても、それ以上は見えません。けれども彼女は窓の外を見つめて、外の暗さとは対照的に楽しそうに目を光らせていました。

 

私は直感的に彼女がその場所を好んでいるように感じ、

「もしかして、ここが好きだから、私を連れてきてくれたんですか?」

 

答えなど期待せずに尋ねた私の言葉に、「そう」と口元が動き、にこっと笑ってくれました。

 

「そうかぁ。ありがとうございます」

期待していた以上のおもてなしに驚いた私は、とても不格好にお礼を言いました。

 

土居さんが迎えに来てくれてまた廊下を歩き食堂に戻ると、彼女は何事もなかったかのように席につき、お茶をすすりました。


「ショートステイで最初、利用し始めてくれたときには、笑っているところを見たことがないほどで、呼びかけにも返事はありませんでした。歩くことが好きで、ずいぶん遠くまで歩いて行ってしまい、ご家族を驚かせた話は聞いていました。利用の回数を重ねるごとに、いろいろな表情を見せてくれたり、一言ふたこと話してくれるようになったり、今日は童謡を歌ってくれることも発見しました」

 

ショートステイや特別養護老人ホームに入所されてくるご利用者さんの情報は、フェイスシート(年齢や要介護度、認知症の症状など大まかに書かれている書類)からしか手に入りません。

 

何十年にもおよぶ人生がたった数枚の用紙におさまるわけもなく、職員たちは利用者さんを迎え入れたあと、手探りでお互いを知っていくようになります。


“介護”といえば、一緒に座って笑いながらお茶を飲んでいる風景

まったく異なる職種で働いていた鈴木さんが施設長になったのは、今から9年前。

 

「当時持っていた介護のイメージといえば、ご利用者さんと職員が一緒に座って笑いながらお茶を飲んでいる風景。けれども、実際は違いました。独特な風土があって、介護について知らないと受け入れてもらえない。だから、ものすごく勉強しました」

 

施設長の仕事は、人に関することと時々営繕。と、茶目っ気たっぷりに笑いつつも、

「ここで働いて馴染んでくれる人もいれば、周りをかき回して辞めていく人もいます。それでも、残された人は、“今宿ホーム”という看板を背負ってやっていかなきゃならないんです」

 

施設という大きな船のかじ取りをしていると、晴れの日ばかりではなく、雨の日も大嵐も乗り超えていかなければならなかったのだと、“看板を背負って”の言葉に込められた今宿ホームの軌跡を、一瞬垣間見た気がしました。


独身男性が多い?!

介護職員に対する世間の持つイメージとして、男性よりも圧倒的に女性が多いと思われているはずです。実際、私の働いていた特別養護老人ホームでも、男性職員は3割ほどでした。

 

「うちは男性と女性が半分ずつぐらいですね。理由は分かりません」と、施設長が言えば、

「なぜ男性職員が多いのか、僕たちにも分かりません。あ、あと独身の人も多い理由も不明です」と、卒業生の奈良さんや土居さんも応じます。


一度は辞めようとした

この日の夕食のメニューについてご利用者さんと話している土居さんは、湘南ケアカレッジの61期生。初任者研修を修了してすぐに採用が決まった今宿ホームで働き始めたものの、1か月が経ったある日「辞めたいです」と上司に告げたそうです。

 

当時の今宿ホームは教育体制が整わず、忙しい中、“介護技術や仕事は、見て覚えるもの”という職人気質な教え方も残っていました。右も左もわからない新人の土居さんは戸惑い、悩んだ挙句の決断でした。

 

「あれは挫折でしたね。全然思うようにできない自分にとっての」その時の心境をそう振り返ります。

 

「フロアーを変えてみたらどうだろう?それでも無理なら、その時に考えよう」上司の言葉にそれだったらやってみようと、フロアーを移動すると、1対1で先輩職員さんに教えてもらうことができました。

 

「あの時辞めてしまわずに、働き続けていて良かったなと思います。研修で教わったときには理解していなかった知識が、働く中で『そういうことだったのか』と腑に落ちるタイミングがあったのです」

 

今となっては、と肩をすくめながら話してくれました。


本来の姿に戻す力

実務者研修に通ってくれていた時の奈良さんは、朝、挨拶をかわそうとすると「おはようございます」と小声でつぶやき、さっと素早く目線をずらして去っていく、本当に物静かな印象がありました。

 

新卒で入社して今はもう6年目。働き始めて2日目に衝撃的な光景に遭遇し、それまで持っていた介護のイメージががらりと崩れたと言います。

 

「経管栄養という方法で、胃に直接栄養剤を注入するご利用者さんがいました。楽な姿勢がとれるリクライニング車いすに座ってもらい、点滴台にぶらさげた栄養剤をチューブを通してゆっくり胃に流し込んでいきます。他のご利用者さんの対応のため、目を離した直後、ご利用者さんの右手が点滴台からお腹にのびているチューブに向かいました。右手がチューブにぶつかり、栄養剤の入っているパックから外れて、栄養剤がこぼれ落ちました。慌てて、手で押さえて助けを呼びました」

 

この場面を目にした彼は、第一発見者であったことから、ひやりはっと報告書(あともう少しでご利用者さんがケガをしてしまいそうでしたという時に、次なる事故を防ぐために情報共有を助ける書類)を書くことになりました。

 

目の前でおきた出来事を思い出しながらしみじみと、

「介護って・・・こういう仕事なんだ」と噛みしめたそうです。

 

「それまでの介護のイメージって、みんなで笑ってお茶を飲んでいるイメージでした。それが、手がいきなり飛んできて、チューブが外れて、栄養剤が噴き出すって、あまりにも違いすぎて・・・。驚きしかなかったです」

 

それからも、できないことに直面する日々だったと言います。

「初めはなにもできなかったけれど、少しずつできるようになっていくのがよく分かりました。それが嬉しかったですし、退屈だと感じることがないです」

 

私の問いから間をはかり、少しずつ自分の中の言葉を探るようにして、ようやくここまで話してくれた彼が、少しだけ笑うようになっていました。早いボールを投げ合うのではなく、ボールを転がすようなコミュニケーションの取り方がとても印象的でした。


夕食の配膳もひと段落したところで、食堂へもう一度案内してもらいました。声をかけてくれたご利用者さんと私が話し込んでいると、すぐ後ろのテーブルから楽しそうな声が聞こえてきました。

 

「ん?んん?!?!」

声のする方へ振り返った私は、思わぬ光景に一瞬目を疑いました。さっきまでの物静かな印象の奈良さんが打って変わって、ごく自然にご利用者さんと笑いながら話していたのです。

 

「このお兄さんね、本当に優しいんだよ。私すごく好きだよ」

映画スターでも見るかのようにキャッキャッと笑うご利用者さん。

その言葉に本気で照れて、顔をくしゃくしゃにして笑う奈良さん。こんな風に笑う人だったのかと、思いました。

 

そのあとも奈良さんの様子を見ていると、どしっとした背中の男性ご利用者さんの傍に行くと、すーっと雰囲気が変わり、ぽつりぽつりと近くによらないと聞こえないような声で言葉を交わしていたりするのです。

 

そして、またほかのご利用者さんの元に行けば、奈良さんが小さなうなずきを返してくれることに気を良くし、楽しそうに話すご利用者さんの横で、微笑んでいるのです。

 

それは、研修中の教室では決して知り得なかった彼の姿でした。

「なぜって聞かれても、僕にも分からないです」

無い袖はふれないとでも言うように、変貌ぶりについては彼の意識の外に答えはあるようでした。

 

ご利用者さんから放出される“受け入れる“というマイナスイオンのような雰囲気が、そこで働く人を、本来の姿に戻してしまう力があるように思えます。

 

介護の仕事は、お茶を飲んで笑っているだけではありませんが、そんな瞬間がないほど忙しいわけでもありません。

 

当たり前のことですが、ご利用者さんは1人ひとり性格も考え方も好みも異なります。職員さんが流れ作業のように画一的にご利用者さんに関わるだけでは、介護とは言えません。

 

1人ひとりに合わせた介護を突き詰めていくと、職員さんも多種多様な人がいればこそ、それぞれの持ち味を生かしつつ、ご利用者さんにとっても、職員さんにとっても、自然な関係が生まれるのではないかと思います。


施設・事業所紹介動画

採用情報

【常勤】

社会福祉法人慶優会 

特別養護老人ホーム今宿ホーム

 

年収例

3,716,200円~※年度末一時金(処遇改善手当)含む(初任者研修修了時の場合)

4,035,700円~※年度末一時金(処遇改善手当)含む(経験3年介護福祉士の場合)

 

月収例

222,400円~(初任者研修修了時の場合)

内訳【基本給172,400円~、夜勤手当7000円/回(月平均5回)、

資格手当15,000円】

他手当:住宅手当(賃貸10000円、持家6000)円、

扶養手当(配偶者10000円、子ども3000)円※子ども手当支給期間は除く

賞与:合計3.5カ月年2回支給

 

246,400円~(経験3年介護福祉士の場合)

内訳【基本給181,400円~、夜勤手当7,000円/回(月平均5回)、

資格手当30,000)円】

他手当:住宅手当(賃貸10000円、持家6000)円、

扶養手当(配偶者10000円、子ども3000)円※子ども手当支給期間は除く

賞与:合計3.5カ月年2回支給

 

待遇

・交通費支給(実費50000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済、企業型確定拠出年金)

・車、バイク通勤(可、駐車場無料)

・昇給あり(2000~5000円)

・制服貸与

 

勤務地

横浜市旭区今宿1-5-1

 

アクセス

相鉄線二俣川駅よりバス「ニュータウン第4」下車、徒歩5分

 

勤務時間

7:30~16:30、9:00~18:00、10:00~19:00、16:30~翌9:30

 

休日

年間休日110日、週休2日制

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上

 

公式ホームページ

http://www.keiyukai.org/

【パート】

社会福祉法人慶優会 

特別養護老人ホーム今宿ホーム

 

時給例

1,100円+年度末に一時金支給(処遇改善手当)(初任者研修修了時の場合)

賞与:合計1カ月年2回支給

 

1,300円+年度末に一時金支給(処遇改善手当)(経験3年介護福祉士の場合)

賞与:合計1カ月年2回支給

 

待遇

・交通費支給(実費50,000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金)

※労働条件により加入保険が異なる

・車、バイク通勤(可、駐車場無料)

・昇給(あり、資格取得により)

・制服貸与

 

勤務地

横浜市旭区今宿1-5-1

 

アクセス

相鉄線二俣川駅よりバス「ニュータウン第4」下車、徒歩5分

 

勤務時間

7:30~16:30、9:00~18:00、10:00~19:00、

または7:30~19:00の間で、5時間~、週に2日の勤務などご相談ください

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上


実際に見学してみたい、または相談・応募を希望される方は、下記の電話番号・お問い合わせフォームよりお願いします。


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かしこまらずに、ゆるやかに

お客様としてご利用者さんに接することに違和感を覚えたなら、もっと身近な存在として、かしこまらずに、ゆるやかにご利用者さんと関わってみるのはいかがでしょうか。

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設

二俣川、南本宿

小さな良いこと、嬉しいことを見つける

利用者さんと二人三脚で、小さな良いことや嬉しいことを見つけていく。そうしているうちに、介護の仕事が好きになっているはずです。

特別養護老人ホーム

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