飛び跳ねる未来の支援者たち【つるかわ学園】

真光寺のバス停から歩いて住宅街を抜けると、子どもたちの弾けるような声が聞こえてきます。「つるかわ学園」と記された門をくぐると、3階建ての建物の脇で、その声の主たちが宙を舞っていました。


園庭に備え付けられた大きなトランポリンの上で自由に飛び跳ねる、彼ら彼女たちの元気な声が敷地中にこだまし、私を出迎えてくれました。


町田市真光寺にある「つるかわ学園」は、令和2年に創設60周年を迎えました。生活介護、施設入所、短期入所(ショートステイ)の3つのサービスを提供しています。

 

生活介護とは、障害のある人が日中利用するサービスで、つるかわ学園では余暇活動やビーズ製品の制作、花壇の管理などを行っています。高齢者介護で言うと、デイサービスがイメージ的に近いかもしれません。


入所施設は、現在20代から60代までの知的障害のある方が利用しています。主な平日の1日のスケジュールを表にすると、朝、入所フロアーで目覚め、日中はつるかわ学園の生活介護や他の事業所に通所し、夕方、また入所フロアーに戻り、支援員さんのサポート受けながらお風呂に入ったり、食事をとったり、寝起きをしています。


敷地内にあるパン工房「もくもくてん」では、つるかわ学園で焼いた美味しいパンを販売しています。牛肉コロッケパンやミルクキャラメルあんぱんなどのバラエティ豊かなパンは、町田市役所内での出張販売でも購入できるのだそう。私がカレーパンを注文すると、店員を務めるご利用者さんが袋詰めしてくれました。


その親しみやすさに救われる

10時をすぎると、1階の生活介護フロアーにご利用者さんが続々と集まってきます。朝の会を終え、CDプレーヤーから流れる音楽に合わせて、身体を動かす時間です。

 

30名ほどのご利用者さんが思い思いに身体を揺らしたり、飛び跳ねたり、手拍子したり、それはそれは盛大な盛り上がりよう。全身で音楽を楽しんでいます。(彼ら彼女らの盛り上がりを言葉だけで表現するのは難しいので、ぜひ文末にある動画を見て、その雰囲気を感じてみてください)。


次々に流れる音楽は、「おどるポンポコリン」などメジャーな1曲から、「エビカニクス」などの最新ソング。彼ら彼女らが他人の目にかまうことなく、「楽しい!」と自己表現している様子を見ていると、私たちが少し忘れがちなその純粋さが羨ましくすら感じました。

 

そして取材中、ご利用者さんの私に対する距離の近さには驚きの連続でした。カメラを構えて部屋に入れば、何人ものご利用者さんが我先にと列をなして自己紹介をしに来てくれたり、握手を求めてくれたり、時には超至近距離での写真撮影を求められたり。


初めは驚いた私も、次第に彼ら彼女らとの近い距離感とストレートな感情表現に慣れ、施設を去るときには寂さすら感じるほどでした。

 

「ご利用者さんから話しかけてくれて、その親しみやすさに救われます」

 

専門学校の実習生や新人職員さんは口々にそう話すのだそう。慣れない場所に緊張している人々の気配も、彼ら彼女らにはお見通しということでしょうか。

 

温かく迎え入れるといえば、つるかわ学園の男性職員には4名も育児休暇取得者がいます。

 

「復帰明けにも、嫌な顔一つせずに待っていてくれたのが嬉しかった」と話す支援員さんもいました。育休が取れる体制だけでなく、ともに働く支援員もご利用者さんも、心から両手を広げて待っていてくれる雰囲気や気持ちは、形としては見えませんが、実は働きやすさの重要なポイントだと思うのです。


行動ではなく、その元になっている理由を探す

12時が近くなると、お待ちかねの昼食の時間です。建物3階の食堂や23階の入所フロアーのリビングなどに分かれて食べ始めます。

 

「早く食べたい」とでも言いたいのか、ご利用者さんが支援員の宇佐美さんの腕に手を乗せてアピールしています。スプーンが口に届くと、彼女はにっこりと嬉しそう。

 

宇佐美さんは、つるかわ学園で勤めて今年で10年目。働き始めたきっかけをこう語ります。

 

「障害福祉に興味をもったのは、中学生の時でした。その頃、同じクラスにいたダウン症の友人のサポートを先生から頼まれていました。彼女には重い知的障害があったことは今となれば分かりますが、言葉の代わりに表情がとても豊かな彼女と一緒にいるのが、ただ楽しかったのでしょうね。その後、ごく自然に専門学校で障害福祉を学び、実習に訪れたつるかわ学園の明るさに惹かれて勤めることにしました」

 

つるかわ学園での支援員の働き方は、8時間勤務のシフト制(夜勤は16時間)になっています。支援員は入所施設や生活介護のそれぞれに所属が分かれるのではなく、どちらも一体となった支援を行っています。

 

日中はほとんどのご利用者さんが生活介護や他事業所の通所を利用しますが、体調不良などの際には入所施設で療養します。

 

つるかわ学園では自閉症のご利用者さんが多く入所しています。自閉症とは、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、パターン化した興味や活動、これら3つの特徴を併せもつ障害で、生まれつきの脳機能障害だと考えられています。

 

「行動ではなく、その元になっている理由を探す」

強度行動障害の支援などの研修で学び、宇佐美さんを含め、つるかわ学園の支援員さんたちが気を付けていることだそう。

 

「他の人の居室に勝手に入り、衣類を持ち出してきてしまうご利用者さんの場合、行動に注目して、その行動を制止するだけでは、ご本人はパニックを起こしてしまったり、また次の時間には同じ行動をとったり、根本的な解決には至りません。大事なのは、“なぜその行動をしているのか?”です。理由を聞いて教えてくれる人ばかりではないので、支援員が観察してその理由を探してみると、わざとやってはいけないことをして支援員の関心を引こうとしているのではないかと気づき、個別に支援員と関わる時間をつくることで行動がなくなることもあります。理由を見つけ、そこに対処すると、彼ら彼女らの行動が変わるのです。」


こだわりに対応する試行錯誤の過程が面白い

昼食を食べて休憩すると、午後の活動に移ります。屋外で花壇の手入れなどをする班、工房でビーズ製品をつくる班等々に分かれ、それぞれの活動に入ります。よく晴れたこの日は、屋外での作業日和で、桜の木の下で仕事がよく進んでいる様子でした。


手袋をつけると、誰に指示されるでもなく、花壇の花の周りに咲く雑草を抜いたり、落ち葉を拾ったり、手を動かし始めました。どうやらご利用者さんには、それぞれの定位置があり、作業もルーティーンになっているのだそう。


「生活を構造化することで、安心できて、安定した生活が送れるようになるのです」

 

写真手前に写る支援員の田中さんは言います。

 

自閉症の特徴として、急な予定の変更など、見通しの立たないことに対する過度の緊張や不安に陥る人が多くいます。明日の予定は何なのか分からないと不安になり、それが強まって自分を傷つけてしまったり、他人に当たってしまったり、不安から問題行動が生まれてきてしまうのです。


そういった方には、「明日の午前・午後は生活介護(施設名:ブリコラージュ)に行きます」などと事前に伝えておくと、不安を覚えることなく朝を迎えることができるようになります。

 

言葉だけでは理解が難しい方には、文章だけではなく送迎車の写真を添えたり、ご本人が確認したいタイミングで確認できるようにボードに記録して、居室に掲示しておいたり、その人が理解できる方法やタイミングに合わせて伝えます。

 

これが生活の構造化であり、その人にあった生活の構造を組み立てると、ご利用者さんは生活をルーティーン化することができ、安心につながってゆくのです。

 

「ご利用者さんも日々変わっていくので、つい最近までは興味のど真ん中にあったことに、ある日突然見向きもしなくなったり、違ったものに極端に興味を抱く(こだわってしまう)ようにもなることがあります。そのこだわりが本人や周りの人にとって辛いものでなければ、それも踏まえて、支援員はまた新しい生活を組み立てていきます。それが面白いのですよ」


思い出してみると、昼食の時間に入所フロアーのリビングで、私は不思議な光景を目にしていました。テーブルに腰かけて食事をする2人のご利用者さん。

 

そして、テレビの前でなぜかソファーの方を向いてひとりで食事するご利用者さん。決して彼の席がないわけではなく、彼はその場所を選んで座っているのだそう。あえて他人と面と向かって座らなくても、本人が望むことなく、それはそれで誰も困らず、彼にとって快適であるならば、こだわりを無理に変える必要はないのでしょう。

 

私たちでも、明日何が起こるのか分からない状態では、たまにであればそれも楽しめたとしても、それが毎日となると選択や驚きの連続で疲れてしまうでしょう。

 

朝起きたら、顔を洗って着替える、朝ごはんを食べて歯磨きをする…と私たちも知らず知らずのうちに、自分の生活をルーティーン化しているはずです。たとえ目立たなかったとしても、こだわりはこだわりです。

 

全てがすぐにうまくいくわけではなく、ご利用者さんとともに試行錯誤を重ねる過程の先に、支援する面白さや喜びも待っているのでしょう。


自分が行った支援が正しかったのか、常に自分に尋ねる

「自分が行った支援が正しかったのか、常に自分に尋ね続けてね」

 

副施設長の臼木さんは数十年前、先輩支援員にかけられた言葉が胸に残っているといいます。

 

プール遊びをしているご利用者さんを支援していた新人職員の臼木さんは、終了時間になって声をかけても、待ってみても、いっこうにプールから上がろうとしないご利用者さんの手を強く引いてプールから出たのだそう。

 

「まだ遊びたい」と訴える彼の手を強く引いてしまったことを臼木さんは悔やみ、先輩支援員さんに相談しました。先輩職員さんは「そういう場面は私たちにもあるよ」と励ましつつ、彼女をそう諭してくれました。


ご利用者さんと向き合っていると、支援員としてどう判断すべきなのか難しい場面に遭遇することも少なからずあるはずです。

 

その時は最善だと選んだ支援も、もしかしたら時が経つと違った側面に気付き、判断が変わるかもしれません。正しい支援をしたいと願うのであれば、自らのそれを振り返り続けていく姿勢が大切だということでしょう。


トランポリンで遊ぶ鶴川の子どもたち

施設長の月岡さんは、新卒でつるかわ学園に勤め始め、支援員から事務局を経て管理職になりました。

 

私が先ほど、つるかわ学園の門をくぐったときに見かけた屋外のトランポリンには、長い歴史があるのだと月岡さんは語ります。

 

昭和50年代ごろ、障害者施設の閉鎖的で、近寄りがたいイメージを少しでも変えようと、園庭にトランポリンを設置したのが始まりでした。

 

その思惑は功を奏し、地域に住む子どもたちやその家族がトランポリンで遊ぶために、つるかわ学園に来てくれるようになりました。午前中は幼児とお母さんたちの憩いの場になり、夕方になれば学校帰りの子どもたちがやってきました。

 

トランポリンのすぐ脇でご利用者さんは屋外作業をしたり、パン屋の店員を務めるご利用者さんと遊びに来た子どもたちが挨拶をし合ったり、つるかわ学園で暮らすご利用者さんと鶴川の町に暮らす人々との間に自然な交流が生まれたのです。


「大きな声を出して歩くご利用者さんに、最初は驚いていた子どもたちも、慣れてくると気にもせずに飛び跳ね、遊び続けています。『障害者とはね…』とわざわざ子どもたちに教えなくても、ここで遊んでいるだけで自然と彼ら彼女らの存在を知ってゆくのです」

 

現在あるトランポリンは3代目。嬉しい知らせは、脈々と続いた地域の人々とのつながりだけに留まりません。

 

「支援員の面接に来てくれた人が、『私は昔、つるかわ学園のトランポリンで遊んでいました』と言ってくれることも少なくありません」

 

月岡さんは窓の外で遊ぶ子どもたちを、優しい目で見守りながら語ります。


ここにいる子どもたちの誰かが、いつしかつるかわ学園に再びやってきて、今日出会った素敵な支援員さんたちのように、ご利用者さんと過ごし、トランポリンで遊ぶ子どもたちを見守る日がやって来るかもしれません。


働く人の声


ご利用者さんと通じ合えたとき、面白いなと感じる

言葉でのコミュニケーションが難しいご利用者さんもいますが、ご利用者さんが独自のジェスチャーなどを使って気持ちを訴えてきてくれたのを理解でき、通じ合えたと感じるとき、この仕事は面白いなと思います。

副主任 宇佐美さん

 

自分が学んだことを役立てられる

行動援護研修に参加することで、今までは分からなかったご利用者さんの行動の理由などが理解できたり、またそれをご利用者さんの支援に活かせると、役立てて良かったなと思います。

副主任 田中さん 

 

やりとりのなかで本音に触れる

ご利用者さんとコミュニケーションをとる中で、笑顔を引き出せたときが嬉しいです。やりとりをしながらご利用者さん自身の本音の部分に触れたり、想いを聞けたりするのはつるかわ学園で働いていて良いなと感じる場面です。

副施設長 臼木さん 


施設・事業所紹介動画

採用情報

【常勤】

社会福祉法人 つるかわ学園 

障害者支援施設 つるかわ学園

 

年収例

3,420,600~3,727,188円(初任者研修修了時の場合)

3,515,308~3,926,384円(経験3年介護福祉士の場合)

 

月収例

225,050~245,599円(初任者研修修了の場合)

内訳【基本給180,000~195,000円、処遇改善手当20,000~24,000円、

夜勤手当3,950~4,133円/回(月平均3回)、シフト手当5,000~5,500円、

住宅手当(扶養なし8,200円、扶養あり8,700円)】

他手当:扶養手当(配偶者16,000円、第1,2子5,500円、第3子以降3,000円)

賞与:合計4カ月、年2回支給※実績による

 

 

月収例

231,009~258,132円(経験3年介護福祉士の場合)

内訳【基本給185,800~207,200円、処遇改善手当20,000~24,000円、

夜勤手当4,003~4,244円/回(月平均3回)、シフト手当 5,000~5,500円、

住宅手当(扶養なし8,200円、扶養あり8,700円)】

他手当:扶養手当(配偶者16,000円、第1,2子5,500円、第3子以降3,000円)

賞与:合計4カ月、年2回支給※実績による

 

待遇

・交通費支給(実費25,000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済)

・車、バイク通勤可(駐車場有料2,000 円、バイクの場合無料)

・昇給あり(2,900~3,600円)

・制服なし

 

勤務地

東京都町田市真光寺町186番地

 

アクセス

小田急線 鶴川駅からバス「真光寺」下車、徒歩7分

 

勤務時間

7:00~15:45、9:45~18:30、11:45~20:30、15:30~翌9:00

 

休日

シフト制・年間休日119日

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上

 

公式ホームページ

http://tsurukawa-gakuen.com/

【非正規職員(週5日勤務の場合)】

社会福祉法人つるかわ学園  

障害者支援施設つるかわ学園

 

月給例

195,000円~(初任者研修修了時の場合)

内訳:基本給170,000円、処遇改善手当20,000円~、シフト手当5,000円

賞与:合計1カ月、年2回支給

 

月給例

197,860円~(経験3年介護福祉士の場合)

内訳:基本給172,860円、処遇改善手当20,000円~、シフト手当5,000円

賞与:合計1.4カ月、年2回支給

 

待遇

・交通費支給(実費25,000円/月まで)

・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済)

・車、バイク通勤可(駐車場バイク無料、車有料2,000円)

・昇給あり(1,430円)

・制服なし

 

勤務地

東京都町田市真光寺町186番地

 

アクセス

小田急線鶴川駅からバス「真光寺」下車、徒歩7分

 

勤務時間

7:00~15:45、9:45~18:30、11:45~20:30

※様々な時間数・日数で働いている職員がいます。

週2日以上の勤務からご相談ください。

 

休日

シフト制

 

応募資格

介護職員初任者研修修了以上


見学ポイント

就職相談担当 影山
就職相談担当 影山

施設のあちこちで出会うご利用者さんの挨拶や握手に応えてみると、アットホームなつるかわ学園の雰囲気がより感じられるはずです。

採用担当からひと言

採用担当 月岡
採用担当 月岡

ホームセンターが大好きで、いくつものホームセンターをはしごすることも珍しくありません。ご連絡お待ちしています!


実際に見学してみたい、または相談・応募を希望される方は、下記の電話番号・お問い合わせフォームよりお願いします。


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人生に、医療をそっとのせてもらう

町田市にある重度心身障害者施設を併設する丘の上の療養病院。変わりゆく今を楽しみながら、地域で暮らす人々を温かく、確かな医療で支える存在へと成長しています。

療養型病院、重症心身障害者施設

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病院で介護士として働くということ

患者さんが嬉しかったり、心地よく感じて笑顔になれる瞬間をつくることこそ、私たち介護士の仕事の本質なのではないでしょうか。

病院

町田・鶴川・柿生