「私はグループホームが好きです」
そう迷いなく語るのは、グループホームレガメ高ヶ坂施設長の鶴田さんだけではありません。町田市のグループホーム連絡会で出会った他の施設長の方々も、同じように口にしていました。
それは決してポジショントークではありません。彼ら彼女たちの語る、「ご利用者さんにできることは自分でしていただきながら、穏やかに、楽しく暮らしてもらう日々」は驚きや喜びに満ちていて、私もその世界を見てみたくなりました。
ここは町田市にある社会福祉法人泰政会グループホームレガメ南大谷(同じく町田市内にグループホームレガメ高ヶ坂もあります)。
2階建ての建物の1階、2階にそれぞれ9名ずつのご利用者さんが暮らしています。全てのご利用者さんに認知症の診断が下りているのも、グループホームの特徴です。現在のご利用者さんの平均介護度は3.2程度、平均年齢は90歳。介護度が低いうちから入居でき、特別養護老人ホームなどよりも比較的に長い期間暮らされている方が多いのだそう。
「ご利用者さんのできることは自分でしていただき、できないところは職員と一緒に補っていくというのが基本方針です」とグループホームレガメ高ヶ坂施設長の鶴田さんは話します。
たとえば、昼食の準備を手伝ってもらうこともそのひとつ。職員さんが調理した料理の香りがリビングに広がると、呼ばれるまでもなくいそいそとご利用者さんがキッチンに来てくれます。
ご利用者さんはカウンターに並んだ盛り付け済みのお皿を、お盆へとひと皿ずつ載せていきます。焼き魚の皮目の向きまで完璧に揃えている姿には、身体に染み込んだ主婦のこころ配りが垣間見えました。
「認知症のある方にとって、お皿の群の中から1つひとつのお皿をお盆に載せ替えていく作業は簡単ではありません。1つのお盆に同じ料理の皿を2つ載せてしまったり、ご飯やお味噌汁の位置がおかしな置き方になったり、ご利用者さんによってどこまでできるかは異なります」
職員さんは隣で見守り、ご利用者さんの手が止まって困っていたら、「ここに置きましょう」と声をかけるなど助け船を出し、ご利用者さんの仕事をサポートしていました。
お皿を並べ終えたご利用者さんに、次の仕事がお願いされました。
「お箸を置いてもらえますか?」
「いいよ。これはどこに置くの?」
「最初は、お盆の上に青色のお箸を置いてください」
「次は?」
「ありがとうね。次は、茶色で持つところに猫が描いてあるお箸」
職員さんの言葉を頼りに、ご利用者さんは入れ物から同じ色のお箸を2本取り出し、向きを揃えて置いていきます。9人分の仕事をやり遂げたご利用者さんは、「終わったわね」と満足げでした。
鶴田さんは話します。
「今日お手伝いをしてくださったご利用者さんは、自宅にいる時からいつもエプロンをして過ごしている方だったそうです。それならば、グループホームでもエプロンをしてもらおうとご家族に提案して、使い込んだエプロンを持ってきてもらいました。それからは、毎朝エプロンを着けて自室から出てこられて、食事の支度を手伝ってくれるのです」
「レガメ高ヶ坂・南大谷では陶器の食器を使っています。順番に載せ替える作業が生活リハビリになるように、陶器のお皿はプラスティック製より重さがありますが、お皿を持ってご飯を食べるだけでも身体の機能維持につながります。食器を持ちにくそうにしていたり、食事の途中でお皿を持つのに疲れてしまっていたりすると、身体機能が落ちてきているというサインにもなります」
認知症の特徴を理解することで、それぞれに異なるご利用者さんのできること、また手伝えばできることが明確になります。生活に必要な家事のすべてを職員さんがしてしまうと、ご利用者さんはただ座っていることしかできず、退屈で張り合いのない生活になっていってしまいます。
ご利用者さんのできることは率先してお願いしたり、職員が適切に声を掛けたり、一部だけ手を貸して、ご利用者さんのできない部分を補うことで、ご利用者さんには「できた」という達成感や役割を持ってもらえます。そして、結果的に長く元気に過ごしてもらうことにもつながっていきます。
認知症のある方の介護を志す人にとっても、このような自立支援が実践できるグループホームは絶好の学びの場になるはずです。
「まるで、自分のおばぁちゃんと過ごしているようです」
レガメ高ヶ坂で働くコールマンさんは、グループホームでの仕事についてそう話します。
「私の祖母は特別養護老人ホームに入所しています。そこで働いているスタッフの方を見て、『こういう仕事もあるのだな』と興味を持ち、自宅近くのレガメ高ヶ坂に応募しました。ご利用者さんはまるで自分の祖母のようで、話をするのがとても楽しいです」
実はコールマンさんは、数か月後に大学留学を控えています。コンピューターサイエンスを学び、次に日本に帰ってくるのは数年後になるのだそう。
「大きいお兄ちゃん、こっち来て」とご利用者さんの孫を呼ぶような声に、コールマンさんは長身を屈めて楽しそうに応えていました。若く爽やかな風を運んでくれる彼の存在が、グループホームを明るく照らしているようでした。
もしも彼がこの先、介護の仕事に就かなかったとしても、たくさんの祖母に可愛がられた思い出や教わったことは、心のどこかに残ることでしょう。
湘南ケアカレッジの実務者研修卒業生の大久保さんも、レガメ南大谷の職員です。他にも、初任者研修、実務者研修の卒業生が数多くレガメ南大谷で働いています。
トイレ介助のため個室に入っていた大久保さんが、廊下でやりとりするご利用者さん同士の声を聞きつけて、仲裁に入る場面がありました。
あるご利用者さんが洗濯済みのシーツを他のご利用者さんに手渡したところ、手渡された側のご利用者さんはそのシーツをどうしたらいいのかが分からず、おどおどと困っている様子でした。
「大丈夫だよ。お部屋に置いておいてくれたら、私がかけておきますよ」
「そう?部屋に置いておけばいいのね」
「そうですね。大丈夫だよ」
彼女の言葉を聞いたご利用者さんは、安心したように自室にシーツを置き、やり取りをしていたご利用者さんと仲良くリビングに戻っていきました。
彼女の声掛けは、言葉の選び方や話し方のどれもがとても心地よく、優しく聞こえました。彼女が大丈夫だと言ってくれるならきっと安心だと素直にそう思えました。
認知症があることで、ご利用者さん同士の会話がうまく成り立たないことでちょっとした波風が起こっても、分からないところを教えてもらえたり、手伝ってもらえれば、何事もなく平和に暮らしていくことはできるのです。
もちろん、普段からの信頼関係があるからこそ、ご利用者さんは彼女の言葉を信じ、その手に安心して身をゆだねることができます。上手な移乗介助のように目立ちはしませんが、ご利用者さんが気持ちよく過ごすことができる声掛けも立派な介護技術だと感じました。
「グループホームで働いたことで、認知症のイメージが180度がらりと変わりました」
レガメ高ヶ坂の施設長の鶴田さんはそう話します。
「特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、介護老人保健施設、そしてグループホームと様々な介護サービスの提供を経験してきました。どのサービスにおいても学べることはありましたが、私はグループホームが一番合っていたと思います」
「実は、グループホームの仕事を友人から勧められたとき、『認知症のある人の介護は苦手だな』と尻込みしました。デイサービスや特別養護老人ホームで出会ってきた認知症のある方々は、『帰りたい』と言いながら常に出口を捜し歩いていたりして、介護するのが大変な人というイメージがあったからです」
しかし、いざ働き始めてみると、彼女のイメージしていた介護するのが大変な人はどこにもいませんでした。そこには、役割を持って、穏やかで、楽しそうに暮らしている人々とそれを支える介護者の姿がありました。
「病院などで暴れて、退院を余儀なくされ、グループホームに入居される方もいます。けれどもグループホームに来ると、元の穏やかなその方に戻っていくのです。認知症のある方は、環境の変化に対応するのがとても苦手です。家からいきなり入院し、点滴につなげられたり、注射をされたら混乱してしまうのも当然でしょう。グループホームでは、その方の家での暮らしにできる限り近づけることで、混乱の種が除かれ、穏やかに笑って過ごせるようになるのです」
昔抱いていた誤解は遥か遠く消え去り、とても楽しそうにご利用者さんたちと話す今の彼女は、とても自然体に見えました。
「これまで、時間に追われながら介護の仕事をしていた方は、その考え方から一度離れて、ご利用者さんのペースに合わせて動くようになりますね」
レガメ南大谷の施設長の丸山さんは、職員さんの変化をそう語ります。
ご利用者さんに無理なく、気持ちよく過ごしてもらうおうとすると、おのずとご利用者さんのペースに合わせるようになり、そうすることでまたその人もご利用者さんから受け入れてもらえるのです。
廊下には、七夕の笹の葉が揺れていました。色とりどりの折り紙でつくられた飾りや短冊の中で、少し線の乱れている字で書かれた願いを私は読み、思わず笑顔がこぼれました。
「七夕さまにお願い、皆さんが元気に毎日過ごせますようにお願いします」
その願いに、ここで暮らすご利用者さんの姿がありありと見えたからです。何かをして「ありがとう」と感謝してもらえることや、どうしていいか分からず困っていたら、「大丈夫だよ」と手を差し伸べてくれたりする安心が担保されているからこそ、心も身体も元気でいられるのだと思うのです。
認知症があっても、穏やかに、楽しく暮らしている今この時が、ずっとずっと続きますようにと私もそっと祈りを重ねます。
働く人の声
答えはひとつではない
介護は人と人との関わりのなかで起こるので、数学のように決まった答えがないところが面白さだと思います。ご利用者さんとの信頼関係や対応の仕方なども職員によって異なるため、関わり方の正解は決してひとつではありません。そこに様々なアプローチができるのも、また介護の面白いところですね。
ユニットリーダー 森さん
湘南ケアカレッジ実務者研修修了予定
話をするのが大好き
特養に入所中の祖母の介護をしてくれているスタッフさんの姿を見て、介護の仕事に興味を持ちました。実際に自分もグループホームで働いてみて、私はご利用者さんと話をするのが大好きなのだと実感しました。また、ご利用者さんとだけではなく、職員同士が会話を楽しめるのも、レガメ高ヶ坂の良いところだと思っています。
介護職員 コールマンさん
できなかったことが、できるように
今までできなかったことが、できるようになり、「やったー!」と思えるときが、介護の仕事をしていて楽しいと感じる瞬間です。これからもさらに、何でもできる介護士を目指していきたいです。ケアマネジャーなどの資格取得も目標のひとつです。
介護職員 大久保さん
湘南ケアカレッジ実務者研修修了
【常勤】 社会福祉法人泰政会 グループホームレガメ高ヶ坂・レガメ南大谷
年収例 3,161,820円+期末手当~(初任者研修修了時の場合) 3,387,120円+期末手当~(経験3年介護福祉士の場合)
月収例 219,988円~(初任者研修修了時の場合) 内訳【基本給173,988円、処遇改善手当16,000円、夜勤手当4,000円/回(月平均5回)、 資格手当10,000円(初任者研修修了)、特定処遇改善手当※今後取得予定】 他手当:住宅手当上限20,000円(世帯主・賃貸の場合)、 扶養手当(配偶者10,000 円、配偶者以外の被扶養者のうちの一人 8,000円)、 期末手当(処遇改善加算分配した金額) 賞与:合計3カ月/年2回支給
237,008円~~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【基本給181,008円~、処遇改善手当16,000円、夜勤手当4,000円/回(月平均5回)、 資格手当20,000円(介護福祉士)、特定処遇改善手当※今後取得予定】 他手当:住宅手当上限20,000円(世帯主・賃貸の場合)、 扶養手当(配偶者10,000 円、配偶者以外の被扶養者のうちの一人 8,000円)、 期末手当(処遇改善加算分配した金額) 賞与:合計3カ月/年2回支給
待遇 ・交通費支給(実費20,000 円/月まで) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、退職金共済) ・車・バイク通勤可、駐車場無料 ・昇給あり(3200円~) ・制服なし
勤務地 (レガメ高ヶ坂)町田市高ヶ坂2-31-18 (レガメ南大谷)町田市南大谷340-1
アクセス (レガメ高ヶ坂)JR町田駅から徒歩15分 (レガメ南大谷)JR町田駅より「本町田団地」行き乗車、「南大谷都営前」で下車、徒歩5分
勤務時間 7:30~16:30、9:00~18:00、10:30~19:30、16:30~翌10:30
休日 年間休日120日
応募資格 介護職員初任者研修修了以上
公式ホームページ |
【パート】 社会福祉法人泰政会 グループホームレガメ高ヶ坂、レガメ南大谷
時給例 1,155円~~(初任者研修修了時の場合) 内訳【時給1,015円、処遇改善手当80円、資格手当60円 】 上記内訳に含まない他手当:夜勤手当4,000円/回
1,195円~(経験3年介護福祉士の場合) 内訳【1,015円、処遇改善手当80円、資格手当100円】 上記内訳に含まない他手当:夜勤手当4,000円/回
待遇 ・交通費支給(実費20,000円/月まで) ・社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、) ・車・バイク通勤(可、駐車場無料) ・昇給(あり:入社一年後を経過した10月・社会情勢・介護職員処遇改善加算の状況による) ・定休(シフト制) ・制服なし
勤務地 (レガメ高ヶ坂)町田市高ヶ坂2-31-18 (レガメ南大谷)町田市南大谷340-1
アクセス (レガメ高ヶ坂)JR町田駅から徒歩15分 (レガメ南大谷)JR町田駅よりバス 「南大谷都営前」下車、徒歩5分
勤務時間 7:30~16:30、9:00~18:00、10:00~19:00、17:00~翌10:00
休日 シフト制
応募資格 介護職員初任者研修修了以上 |
見学ポイント
採用担当からひと言
他にもこんな施設・事業所があります
ご利用者さんの小さな希望とご利用者さん自身がつながり、それが生きる楽しみにもなっていく。訪問介護は、ご利用者さんとご利用者さんの希望をつなげる仕事でもあるのです。
訪問介護
町田