さぁ、出かけよう!

今日は久しぶりのガイドヘルパーに行ってきました。寒さに手はかじかみながら、ご利用者さんの家へお迎えに上がりました。今回のご利用者さんと出かけるのも4回目となれば、もう名前は覚えてくれているけれど、彼にとって、説明と予定の確認は最重要事項。名前を名乗り、今日の予定を時系列に、お知らせを一緒に読みながら確認していきます。

 

準備が整い「じゃあ町田駅に行きます」と伝えると、「行きます」と返してくれました。おじいさまに見送られて「いってきます!」と、やや小走りな彼に合わせて私も走りました。

 

ガイドヘルパーは、障害のあるご利用者さんの外出を支援する仕事です。私がかれこれ3年関わらせてもらっているのは、知的に障害がある人のガイドヘルパーです。

 

平日は通所施設で、仕事や活動をしているご利用者さんの休日や平日の夕方、余暇を充実して過ごしてもらうのが目的です。私たちが仕事終わりに友人と食事に行ったり、スポーツクラブで汗を流したり、休日に映画を見に行ったりするのと同じです。一人では外出するには出来ない事や配慮が必要な場合があるので、一緒に出掛けるヘルパーが出来ない部分の代わりや工夫をして、安全に楽しく時間を過ごしてもらいます。

 

私が今日一緒に出掛けたのは、自閉症という障害のあるご利用者さんです。ふっくらとした頬がチャーミングで、目を丸くして喜んでくれる方です。

 

彼は言葉だけでは理解できないことも多く、一緒に写真を見たりしてコミュニケーションをはかります。行動の見通しが立たないこと、予定の急な変更、いつもの食べもの以外は口に出来ないといった苦手なこともある彼ですが、話してくれない分、「どう感じているのかな?」、「どう見えているのかな?」と、彼の視点に立って、考えることでしか理解できない、そうやってゆっくりと知り合えることが楽しいと私は思うのです。

 

大きな声を出して飛び跳ねるのは、彼が何かに困っている合図だと思っていました。今日も電車の中で始まってしまった行為に、「予定は前もって伝えたし、肩を叩いて飛び跳ねる事と違う刺激に変えて見たけれど、まだ止まらない。手を握って安心してもらえるように笑ってみても止まらない。もちろん、表情や言葉で伝えても止まらない・・・」

 

準備も万全だったはずだけど、やっぱり始まってしまった大声に焦っていると、一緒に出掛けていた他のご利用者さんを担当しているヘルパーさんが、さっと自分の首から下がっている名札を裏返し「しー。電車やバスでは1の声で話しましょう」と、書いてあるカードを見せながら「しー」と合図をすると、「はい」と返事をして、彼はまた窓の外を眺め始めました。本人は気づかないうちに声が大きくなってきても、またカードを見せて、「しー」とすると、「はい」と静かにしてくれました。

 

ヘルパーさんの瞬時の工夫に助けられて、順調に目的地の新江の島水族館に辿り着きました。紙を見せながら文字を読んで予定を確認できる、写真でないと物を理解できないということは、”目でわかる”情報が彼には届きやすい、逆に”耳から入る”情報は届きにくいということ。指示カードと呼ばれる、予定や注意を目で見て分かるように用意しておくことは、障害者支援では珍しいことではないのに、的確にアセスメントして必要な工夫を用意するには、まだまだ経験不足であったことを反省しつつ、1つ彼の配慮が必要な行動への工夫が見つかって嬉しくなりました。


お目当てのイルカのショーは残念ながら見ることは出来ませんでしたが、小さな青い魚を目で追っている姿や、水槽からは距離をとり遠巻きに観察したり、魚よりも照明器具が気になるようで天井をよく見ていた彼を真似ると、また違った水族館の楽しみ方を教えてもらいました。ご利用者さんの安全で楽しい時間のアシスタントだったはずが、自分の持っているものとは違った見方や楽しみ方、伝え方や考え方の幅広さを見せてもらえることがガイドヘルパーの醍醐味かもしれないと私は思います。

 

そして、ご利用者さんの楽しい時間を支援できていると直に感じることができる充実感、知らなかった世界を見れたり教えてもらえたりすると、自分の人生が昨日よりちょっと豊かなものになった気がするのです。

(影山)