介護の仕事を探すときに困ったこと

「全部一緒にしか見えない」

引っ越しを機に、勤めていた特別養護老人ホームを退職し、再び就職活動をすることになった私が、実際に介護の仕事を探してみて思ったのはこの一言に尽きます。

多くの人がするように、大手の求人誌を手に取り、インターネット検索で求人サイトを探してみると、30件近い募集条件が見つかり、あまりの求人の多さにまずは呆気にとられました。

「30件の中から1件、一番いい職場を見つけなければ」と、奮い立ち、募集条件を見比べてどうにか違いを見つけようとしましたが、そこには大きな壁が立ちはだかりました。

 

募集条件に載っていたのは“基本給〇〇円~”、“〇〇駅から徒歩5分”、“働きやすい職場”、“充実の研修制度”など、同じような言葉ばかり。これから数年は勤める職場を決めるというのに、これだけしかその職場のことは書かれていませんでした。

 

デイサービスやグループホーム、老健(老人保健施設)、特養(特別養護老人ホーム)など提供しているサービスの違いをある程度は理解していても、AデイサービスとBデイサービスの違いや、Aデイサービスにしかない魅力はどこにも見当たらなかったのです。

 

これでは、たまたま面接を受けて飛び込んだ職場が、たまたま自分にとって一番いい職場だという奇跡の偶然を探しているようなものでした。今振り返ってみても、行き当たりばったりな就職活動をしていたと思います。

 

介護仕事百景では、私が介護の仕事を探していたときに、お給料も立地条件も大事だけれど、もっと本当は知りたかったことを載せています。“そのデイサービスには、どんな人がどのような思いで働いているんだろうか”、“デイサービスに通っているご利用者さんはどんな表情をしているのか”どの募集条件を見ても書いていないような、そこで働く人について、そこでの介護について書いてあります。

 

私は、そこまで大きくお給料は変わらないのであれば、ご利用者さんの今だけじゃなくて未来を想像できる介護職として楽しく働きたいと思っていました。もちろん、人によって職場を選ぶ基準は違います。けれど、少なくとも働く職場のことを少しでも知ったうえで働くのと、知らぬまま働くのとでは雲泥の差が生まれると思います。

 

これは介護仕事百景で、施設に伺うようになって実感したことですが、フォーチュンクッキーのように一見同じように見えていても、中身はまったく異なります。フォーチュンクッキーの中身のくじのように一つひとつの施設は、吉か凶かで表すものではありませんが、見てみるまで中身が分からないという点では同じです。どの施設にもその施設の色があり、ひとつとして同じ施設はないのです。

 

残念なことに、施設の採用担当者からよく耳にするのは

「思っていた職場と違った。こんなつもりじゃなかった」と言い残して、入職して数日で退職してしまう人が多いということです。

 

正直、実際に働いてみないと分からないこともありますが、たった数日で「合っていない」と分かるほどのミスマッチであれば、職場を探す段階で、もっとその職場のことを知ってさえいれば気づけた人もいたのではないかと思うのです。

 

そんなミスマッチを起こさないためにも、介護の仕事を探す人にとって、少しでも選ぶための道しるべや手がかりとなることを願って介護仕事百景を作っています。

(影山)