16時間夜勤と8時間夜勤の違い(後編)

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夜勤の業務について

続いて、夜勤の業務の内容について(上記図参照)、16時間夜勤・8時間夜勤それぞれの業務の流れをまとめてみました。あくまで、おおよその業務ですので、実際には昼間にはできない部分の掃除や書類作成・管理などの残務があったりしますし、眠れない利用者さんがいれば随時対応することになります。

 

16時間夜勤には、夕食・朝食の2回の食事介助と更衣などの就寝・起床介助が業務として含まれます。もちろん8時間夜勤の施設でこういった介助が行われていないのではなく、遅番や早番などの他の勤務帯の職員が担当しています。

 

16時間夜勤にある夕食介助から就寝介助までの時間帯には、食事介助や服薬介助、口腔ケア、更衣、排泄など多くの介助が必要になります。ご利用者さんによって必要な介助もそのタイミングも異なるため、全体を見ながら判断する必要があります。この時間帯が、夜勤の仕事において1つ目の山場です。

 

21時をすぎると、遅番職員は退勤し、夜勤職員のみの時間になります。多くのご利用者さんが暮らす従来型特養などの施設では、複数の夜勤職員が同じフロアーでペアとなり勤務しています。ここから4時ぐらいまでの間に2時間の休憩を交代にとっていくことが多いでしょう。

 

その後、5時ごろになると、早起きのご利用者さんが目覚め始め、その他の方も順番にパジャマからの着替え等々、身支度を整える介助に入ります。そうしてようやく7時半ごろ、出勤してきた早番職員とともに朝食介助をして、16時間の記録を行い、日勤職員や早番職員に向けて申し送りをし、勤務が終了します。

 

私の経験としては、この朝食介助の時間帯がもう1つの山場でした。ひと晩の疲れと眠気が、早番職員がきたことによる安ど感とともに、ひょっこり顔を出してしまいそうになるのです。特に朝食時のご利用者さんへの服薬介助は、神経をつかうものでした。誤薬を防ぐために、薬の服薬前には声に出して名前と日付を読み上げ、複数の職員で確認するなどの対策が重要です。(*夜勤職員は朝食時の服薬介助はしないと決めている施設・事業所も増えてきています)

 

対して、8時間夜勤においては、表からも分かる通り、夕食介助から就寝介助、起床介助から朝食介助などはありません。一部の早起きなご利用者さんの起床介助はあるかもしれませんが、早番職員にその多くは割り振られているはずです。16時間夜勤に比べると、ご利用者さんの多くが就寝している時間帯のみの勤務なので、体力的には楽に感じる方もいるでしょう。

夜勤と他の時間帯の勤務

次に、夜勤だけではなく、他のシフトとの重なりや連携も全体的に見てみましょう(上記図参照)。あくまでも例ですので、時間等は施設・事業所によって異なりますが、おおよそのシステムは同じです。

 

ここで注目して見てもらいたいのは、夜勤と早番・遅番(準夜勤)との色の重なる時間数です。

 

16時間夜勤では、遅番と4時間、早番と3時間一緒に勤務できるため、まだ介護経験が浅い方や自信がない方にとっては、多くの職員の目と手がある16時間夜勤の方が安心して働けるかもしれません。

 

対する、8時間夜勤では、準夜勤・早番ともに1時間ほどしか勤務が重なりません。すなわち、夕食介助や朝食介助はそれぞれ遅番や早番のみで対応することになります。団体(ペア)で動くのが16時間夜勤だとすると、個で動くのが8時間夜勤のシステムでしょう。個として業務をしっかりとできるのであれば、他職員に気を遣う時間が少ない8時間夜勤は魅力的に映るはずです。

 

もちろん、どのシフトであってもいきなり一人で勤務するのではなく、教えてもらいながら徐々に独り立ちしていきますし、8時間夜勤であっても、となりのユニットには同じ夜勤者がいますので、万が一のことがあれば相談しながら、働いていくことになります。

 

私の場合、夜更かしは得意で、逆に朝の早起きが苦手だったので、夜勤はとても自分の体のリズムと相性がよいと感じていました。凍り付くほど寒い冬の早番(7時ごろからの勤務)ほど堪えることはなく、「寒すぎる」とぼやきながらの通勤がない夜勤明けの朝は快適ですらありました。

 

新人時代には、昼間にあれほどいた職員がたった夜勤時は数名になりますので、「本当にご利用者さんを朝まで守れるのだろうか」と不安をおぼえたこともありました。しかし、実際にその夜を迎えてみると、多くのご利用者さんは眠りについていますし、やるべき仕事は絶えないので、あっという間に無事に朝がやってくることがほとんどでした。

 

とはいえドラマもつきもので、夜勤中ご利用者さんの居室へ見回っていると、真っ暗闇のなかベッドに正座してお経を唱えている元僧侶のご利用者さんに驚き、悲鳴をあげてしまったことや、急に家族が恋しくなったのか泣き続けるご利用者さんの話を眠りにつくまで聞いたことなど、今となっては懐かしい記憶です。

 

夜だからこそ見られたご利用者さんの姿もありましたし、せっかく介護の仕事をするのであれば、一定の時間だけではなくご利用者さんのできうる限りすべてを見て、知りたいという探求心もありました。結果として、不安を抱えながら始めた夜勤も、たくさんの夜を施設・事業所で過ごしたことで、今では一番自分に合っている働き方だと思えるようになりました。

 

16時間、8時間どちらの夜勤の働き方においても、最終的にはそれが自分に合っているということが続けられる要因のひとつでしょう。お金、働く時間、業務内容やシステム等を総合的に知って、自分で選んでみることがその近道になるはずです。(影山)