従来型特養とユニット型特養の違い

「特別養護老人ホームで働きたいのですが、ユニット型と従来型は何が違うのですか?」

 

多くの種類がある介護サービスの中から特別養護老人ホームだけに絞っても、ユニット型と従来型とでは別物と考えた方が良いほどの違いがあります。正しく違いを知ることで、本当に自分に合った働き方ができる職場が見つかるはずです。

 

まず、特別養護老人ホーム(以下、特養)には原則として要介護3以上の方が暮らしています。ターミナルケア(終末期ケア・看取り介護)を行っている施設も増えてきており、終の住処とも呼ばれています。多くの施設が入所定員100名前後となっており、町田市内で23か所、相模原市で38か所あります。(令和26月現在)

施設の建物のつくりの違い

従来型特養とユニット型特養の一番分かりやすい違いは、入居者さんが暮らすエリアのつくりです。

従来型特養のつくりの例
従来型特養のつくりの例

従来型特養では、ご利用者さんの居室は2~4人部屋(一部個室のある施設もあります)になっています。(上記の図参照)

 

2階建て・80人定員の施設であれば、1階に40人、2階に40人というように、1つのフロアーにある程度まとまった人数のご利用者さんが共に生活しています。

 

そのため大きな食堂があったり、働く職員もその階ごとに配属されるので、多くの人数のご利用者さんを多くの職員で介護する形になります。

ユニット型特養のつくりの例
ユニット型特養のつくりの例

対してユニット型特養では、ご利用者さんの居室は基本的に個室です。1つのユニットには、およそ10の個室(施設によっては、8室のところもあれば12室のところもあるなど違いがありますが、体感的には10室が一番多いパターンです)があります。

 

ユニット内には、その人数の方に合った小規模のリビングやお風呂、トイレもあることから、生活がユニット内で完結できるようになっています。まるで一つの家だと感じられ、より自宅に近い環境をつくっています。職員はユニットごともしくは、隣接しているもう一つのユニットと兼任しての配属になります。

40人が暮らす広さと、およそ10人が暮らす広さでは人数に4倍の違いがあるように、介護職員として働く際にも、動く範囲が違ってきます。フロアーの端の部屋でナースコールが鳴り、次はもう一方の反対側の部屋でナースコールが鳴るというようなことも日常茶飯事です。私がユニット型特養で働いていたときに比べて従来型特養の方が、一日の歩く距離が長かった気がするのはこのためだと思います。現に、従来型特養で体調管理の一環として万歩計をつけていたものを見せてもらうと、3万歩以上の数字が並んでいたことがありました。

 

またユニットの家のような雰囲気やつくりは、住む人にとってはある程度こじんまりとした感じがして落ち着くという意味から理想だと思います。しかし働いてみた実感としては、初めは広く思えたユニット内が、働き続けるにしたがって、いつも同じ光景だと感じるようになったこともありました。それは家庭的な場所であるがゆえに、18時間過ごすユニットが、自分にとっても自宅に近い場所へとなっていたのだと思います。

職員の人数と働き方の違い

ご利用者さんが暮らすエリアのつくりが違えば、それに伴って必要な介護職員の人数や時間ごとの働き方も異なります。

 

従来型特養では、40人ほどのご利用者さんがいるフロアーであれば、早番が2人、日勤が2人、遅番が2人というように、同じ勤務帯で複数の職員が働き、入浴や食事、排泄などの介助をそれぞれ担当しています。フロアーにいるご利用者さんが多い分、ともに働く職員の数もユニット型特養に比べて多くなります。たとえば、新人職員さんがOJT(先輩職員に仕事を教えてもらう時期)を終えて、一人前として担当する仕事を1人でおこなっていくようになったあと、これはメリットにもなります。

 

OJT明けの新人職員さんは、気持ちとしてはまだ不安な面もあるでしょう。従来型特養であれば、フロアーに一人っきりになることはほぼないので、少しは不安も和らぐと思います」

とある介護施設の採用担当者さんは、長い採用経験からそう語ります。

 

私が従来型特養で介護の仕事をスタートさせたときも、先輩職員さんの後をついて回って仕事を教えてもらい、次は自分が介護しているところを先輩に傍で見ていてもらい、と順を追ってOJTが進んでいました。そういえばいつごろ新人研修は終わったのだろうかと思い出そうとしてみましたが、定かではありませんでした。いつもの職員人数にくわえてカウント外の私というようにあった余剰人員が、一人前として人数の内にカウントされた境目があったはずが気づきませんでした。従来型特養では同じ時間に働く先輩職員が多い分、みなが少しずつ見守り、知らないうちに助けてくれていたことで、滑らかに一人前へと育ててもらっていたのだと思います。

 

また、他の従来型とユニット型の両方の施設を管理している採用担当者さんは、こんな風にこぼしていたこともありました。

「従来型とユニット型では、残業時間数が違います。ユニット型では1時間単位の残業が見受けられますが、従来型の施設では残業はほぼありません」

 

もちろんすべての施設に当てはまるわけではなく、残業の多い従来型特養や残業がゼロに近いユニット型特養もあります。そこでの残業の理由は、ともに働く職員の数が関係しているのではないかと想像できます。多くの人数で勤務している従来型の方が、少ない人数が時間ごとに入れ替わっていくユニット型に比べて、別の勤務帯の職員さんに仕事をお願いしやすいという面があるはずです。ユニット型特養では、自分が勤務を終えるまでにある程度のところまで仕事が進んでいないと、ご利用者さんや次の勤務帯の人に迷惑をかけてしまうといった風に考えてしまう環境になりやすいのかもしれません。

 

また、共に働く職員が多いという点は、新人職員のみならずどの職員にとってもメリットになることもあります。同じご利用者さんに対する介助であっても、職員によって声掛けの仕方が違ったり、工夫が違うそれを見る機会に恵まれているのです。たったひとつの正解があるわけではない介護の仕事だからこそ、多くの方法や考え方を知り、触れておくことで、自分の介護の引き出しを増やしていくことができます。そういった視点で見てみると、自分以外の介護を見る機会が多いということは、自分を磨けるチャンスがたくさんあるということにもなりますね。

 

しかし、従来型特養において担当するご利用者さんの数が多いということは、それだけ多くのご利用者さんの情報を覚える必要があるということです。40人のご利用者さんがいたら、40人分のADLや最近の様子などの情報を収集します。生活記録と呼ばれるファイルやパソコン上に管理されているそれは、始業前に確認してから仕事に入ることになります。新人時代は、まずは名前を覚えるだけでも苦慮しましたが、毎日毎日覚えていくうちに少しずつ自分のなかにご利用者さんのデータが蓄積されていきます。何か月も勤めていれば、休み明けに出勤した時には、不在だった時間の分だけ情報をとれば良くなるので、楽にもなっていきますし、慣れていくはずです。

 

スポーツで分かりやすく例えると、従来型特養はサッカーの試合であり、ユニット型特養は柔道などの団体戦です。従来型のようなサッカーは、フィールド内に常に多くのプレーヤーがいる集団対集団の競技です。プレーヤーはそれぞれの役割を分担し、互いが協力することで、点数を得ていきます。対してユニット型の柔道などの団体戦は、5人のプレーヤーそれぞれに先鋒、中堅、大将と役割はありますが、競技は個人対個人で行われます。先鋒は先鋒として戦い、勝利の1点を重ねることで、団体(チーム)としての勝利が得られます。単純に個人対個人の勝負なのではなく、得点はチームの物という団体戦であるのがポイントです。

 

サッカーのような従来型特養も柔道の団体戦のようなユニット型特養もどちらもチーム力が試され、誰か一人だけが頑張るというようなスタンドプレーでは、勝利も良い介護もできません。従来型特養とユニット型特養とでは、協力の仕方(働き方)、役割や個として求められる力が違ってくるということです。

 

従来型特養・ユニット型特養のどちらにおいてもメリットはあるので、どちらがより向いているのかは人それぞれだと思います。知らない分野のこととなると、知り合いに特養で働いている人がいると、話してくれる情報がその道の通の話のようで、つい鵜呑みにしてしまうことがありますが、危険だと思います。気持ちはとても分かりますが、たとえ特養などで働いた経験のある友人の話であっても、それはあくまでも、あなたではなくその人がその施設で働くなかで感じた主観であることを念頭においておくことです。大変なようですが、情報源は複数持って、フラットに比べてみることがユニット型・従来型どちらであっても自分に合っている方を導き出すコツだと思います。(影山)