花に語りかけるように【花物語】

働きやすい環境って?

南町田のグランベリーモールを抜けてから10分ほど歩くと、屋外で和やかに語らい合うお年寄りたちの姿が目に入ってきました。ここはグループホーム「花物語まちだ南」。

 

天気の良い日の午前中はいつも、施設の外にテーブルとイスを出してきて、四季折々の花壇に囲まれながら、皆でお茶を飲むそうです。太陽の光を浴び、風に頬を撫でられる。流れる音楽に合わせて、手拍子も聞こえてくる。ご利用者様たちの顔が晴れやかなのは、自然の中で生きているという実感があるからでしょう。

 

グループホームとは、認知症の方々が必要な支援を受けながら共同生活する施設のこと。少人数であることが大きな特徴であり、「花物語まちだ南」はワンフロア―に9人のご利用者様たちが、1階と2階に分かれて生活しています。

 

職員は介護者という立場ではなく、ご利用者様の生活に寄り添う形で支援することが求められます。ご利用者様にとってはここが家であるように、職員も自宅にいるような安らかな感覚になるといいます。

 

「働きやすい環境ってなんだろう?」

 

施設長の鈴木綾子さんは、このグループホームを立ち上げたときからずっと考えています。女性にとって、男性にとって、家族がある、小さい子どもがいる、それぞれの状況によって働きやすい環境が違うならば、ひとり1人が働きやすい環境をつくればいい。


 

たとえば、子どもを連れてきてもいいし、ネコを連れてきてもいい。職員の赤ちゃんを背におぶって仕事をしてもいいと思う。できるだけのことをやってみて、どうしてもできないことがあれば、もう一度考え直してみればいい。

 

「花物語まちだ南」では職員の子どもがご利用者様と共に過ごし、職員が飼っている猫(マロン)も事務所にいました。ふたりともくつろいでいました。これは本当の話です。働きやすい環境と口で言うところは多いのですが、実際には何をやっているのでしょうか。


こういうことをやりたい

「こういうことをやりたい、こうありたいという気持ちを持っていることが大切です」と施設長の鈴木綾子さんは語ります。

 

言われたことを言われた通りにやる(やらされる)のではなく、自分で考えて、イメージして、やってみる。もしひとりでできなければ、周りに相談し、協力してもらう。やると決めたらあきらめない。流れ作業をしたければ、大手の施設に行けばいい。そうではなく、こうしたいという想いがあれば、「花物語まちだ南」での介護の仕事は楽しめるのです。

 

鈴木さんには、大きな施設での研修に参加したときの、今でも忘れられない光景があります。


 

先輩と一緒にオムツ交換をしたとき、フロアの右側と左側に分かれ、先輩は右側、鈴木さんは左側を担当することになりました。まるで競争するかのように先輩は飛び出していき、鈴木さんがまだ半分ぐらいの所のご利用者様のオムツ交換をしているとき、すでに先輩は最後まで終わっていました。

 

鈴木さんがのんびりとしていたわけではありません。できるだけ素早く、かつ綺麗に気持ち良くなってもらうために最善を尽くそうとしていました。確かに仕事は速い方がいいし、時間に限りがあることも分かります。しかし、それは作業であり、介護ではありません。

 

グループホーム「花物語まちだ南」では、ご利用者様と一緒にお茶を飲み、くつろぐ時間を共にします。ご利用者様とゆっくり話すことは大切なことであり、ご利用者様同士が話をするような場をつくることも仕事のひとつです。芋けんぴを食べながら、女子会と称して自ら盛り上がることもあります。


先日、職員たちのチームワークで、入浴を拒否するご利用者様がお風呂に入ってくれたときは嬉しかったといいます。ひとりの職員がご利用者様の機嫌の良さを察し、入浴時間ではありませんでしたが、もしかしたら入ってくれるかもと感じ、誘導するのが得意な他の職員がお風呂場まで連れて行き、お風呂介助に慣れている別の職員にバトンタッチして気持ちよく入浴してもらったそうです。見事な連携プレー。

 

いつも一緒にいるからこそ、ご利用者様の変化に気づけるのです。そして上手く行くと、職員たちの自信にもつながります。


やりながらできるようになる

湘南ケアカレッジの卒業生である迫田さんは、かつてはコンピューター関連の仕事をしていましたが、精神的に病んでしまい、転職を決意したといいます。


 

面接にて、「体力的に厳しかったの、それとも精神的に苦しかったの?」と鈴木さんが迫田さんに尋ね、「体力的な問題であれば介護の仕事では稼げないけど、精神的なものであれば、うちで働けば取り戻せる(癒される)よ」と話したそうです。今や迫田さんからは笑顔が絶えることなく、鈴木さんの右腕として大活躍しています。全くできなかった料理も、今はできるといいます。私はかつての迫田さんを知りませんが、今の迫田さんと比べたら全くの別人なのでしょう。

 


 

鈴木さんいわく、「グループホームは、先生にたとえると小学校の先生みたいな仕事かな。中学校や高校の先生だと専門の科目しか教えないけど、小学校の先生は何でもできないといけないでしょ。だから、グループホームで働くと、だいたいの仕事ができるようになりますよ」。グループホームでは何でもやらなければなりませんが、だからこそ、やりながらできるようになるのです。


わさわさしない、必要以上にテレビもつけない

「花物語まちだ南」をひと言で表現するとすれば、穏やか。ご利用者様も職員も穏やかで、施設全体の雰囲気も落ち着いています。


 

職員が慌ただしく動き回ったり、怒声が飛び交ったりすることがありません。認知症の方々が生活をするグループホームでは、ちょっとしたことがきっかけでワサワサしてしまうこともありますが、そういう場面もまったくないのです。

 

できるだけ屋外で過ごしてもらったり、傾聴や声掛けであったり、たとえば食事の配膳の順番を工夫してみたり、その時々のご利用者様の状況に合わせて考えて職員が行動しています。

 

その他、テレビも必要以上にはつけないようにして(日曜日の「のど自慢歌合戦」は例外)、その代わりに音楽を流しています。そうすることで、職員とご利用者様、またはご利用者様同士の会話が生まれやすくなるのです。


そういわれてみれば、テレビに魂を吸い取られてしまっているようなご利用者様がいません。職員はテレビに頼ることなく、ご利用者様との会話やスキンシップを取ることで、コミュニケーションスキルが磨かれることになります。

 

これは生活と介護の現場に精通した素晴らしい試みだと思いました。お昼には私も食べたくなるような美味しそうなご飯を、皆さんで、ゆったりと、笑顔で召し上がっていました。


リーダーの存在

施設長の鈴木さんと話をしていると、こういうリーダーが介護の現場にはもっと必要なのだと思わされます。

 

介護現場の混乱や施設・事業所ごとに提供するサービスの質に大きなムラがあるのは、リーダーがきちんと存在しない、育っていないことにあると私は感じています。

 

リーダーは主任であってもいい、施設長であってもいい。こうあるべき姿を身をもって示してみせ、できるまで伝える。マネジメントの基本のキであるにもかかわらず、どれだけのリーダーが実行できているのでしょうか。

 

「その場で伝えるようにしています」と鈴木さん。

 

仕事を中断してでも、その場で伝える。そのためにはリーダーは現場にいなければならないし、見ていなければならない。そして何よりも、「その人のできることを伸ばしたい」と語る彼女には、人間に対する包み込むような愛情が溢れているのです。

 


 

午後は、尺八奏者の方がボランティアで演奏しに来てくれました。太鼓や歌のコンサートなどを月に1回は開催しているそうです。「職員は大変だと思いますが、私たちも楽しまなければね」と鈴木さん。1階のフロア―が満員になるほどご利用者様たちが集まり、開演を待っていると、尺八の力強い音色が響き渡りました。一緒に歌う方、音楽に合わせて身体を揺らす方、手が熱くなるまで手拍子を打つ方、それぞれのやり方で演奏会を楽しまれています。

 


一番後ろの席に、卒業生の杉本律子さんの姿が見えました。優しくご利用者様に寄り添い、声を掛けています。杉本さんは湘南ケアカレッジにいたとき、一緒に通っていたクラスメイトが病気で出席できなくなったことを気に留めて、まるで自分のことのように心配してくれたことを思い出しました。その本当の優しさとほんわかとした雰囲気は、きっとご利用者様たちを和ませているに違いありません。


花壇コンクール2015最優秀賞

「花物語まちだ南」は町田市主催の花壇コンクールにおいて、2015年度の最優秀賞に輝きました。

写真提供:花物語まちだ南


328団体中の1位。市から配られた苗をもとにして花壇をつくり、手入れをして花を育てる。植え替えの時期には、施設長である鈴木さんから職員まで総出で、頭からほっかむりと麦わら帽子をかぶって土を入れ替え、花を植えるといいます。

 

私が訪れたのは11月だったため、その美しい花壇をこの目で見ることはできませんでしたが、5月と9月が見ごろだというので、春になったら、咲き誇るパンジーや町田市の花であるサルビアを観に来たいと思いました。


 

私はこれらの花にまつわるエピソードを聞いて、その施設名ゆえに花を大切にしているという簡単な話ではないと感じました。それは手入れの話なのです。介護と花壇は全く関係がないように思えますが、そうではありません。花を美しく育てるためには、来る日も来る日も水をやり、丈が長くなり過ぎれば切り揃え、愛情を持って接しなければなりません。小さなことでも手を抜かない。後回しにしない。それは介護の仕事にもつながってくるのです。

 

それは言葉づかいにも現れます。ご利用者様はお客さまである以上、「花物語まちだ南」では〇〇さんという名前の呼び方を徹底しています。介護の現場でよく見かける、〇〇ちゃんやお父さん、お母さんというフランクな呼び方はしません。

 

親しみを込めているつもりであっても、ご利用者様はどう思っているか分からないいし、そのご利用者様のご家族が聞いたときに良い気持ちはしないでしょう。ご家族の前だけ呼び方を変えるのは難しく、普段の言葉づかいが出てしまうものです。自分のことを「じいじ」と呼ぶご利用者様に呼応して、その方を「じいじ」と呼んだ職員は、それでも〇〇さんと呼びなさいと諭されたといいます。

 

言葉づかいは、ご利用者様に対する呼び方だけではありません。かつて「花物語まちだ南」に実習に来た若い女の子がいました。その子は実習が終わると、家の近くの施設で働くことになったそうです。

 


それからしばらくして彼女が遊びに来てくれたとき、ふとした会話の中でご利用者様のことを「うざい」と表現した言葉を聞いて、鈴木さんは驚きました。とても心根の良い子だっただけに、余計にびっくりしたそうです。彼女には悪気はなく、たぶん周りの職員さんたちがそういう言葉づかいをしているのを聞いて、自然と発してしまったのだろうと鈴木さんは彼女を弁護しました。

 

花に語りかけるような言葉を介護の現場でも聞きたいですね。


採用情報

施設・事業所名称 花物語
 サービス形態 グループホーム
 勤務場所 町田市、神奈川全域
 最寄り駅・アクセス 各施設による
募集職種 施設職員
雇用形態 パート・アルバイト
仕事内容

グループホームの利用者様の生活支援

・週5日勤務(夜勤含む)

・週3日勤務(夜勤含む)

もしくは土日祭日出勤できる人

・夜勤専門でもOKです。

 

給与

 

時給1,020円 (日曜祭日30円増し)、夜勤1回につき6,000円、ボーナスなし

勤務時間

A勤務:8時~17時

B勤務:9時30分~18時30分

夜勤:17時~翌日10時

休日  相談の上、決定します。
資格  介護職員初任者研修、ホームヘルパー2級以上
ボランティア・見学  OK
夜勤  あり(回数等は相談によって決定します)
交通費  別途支給
社会保険  週5日勤務の場合は社会保険有り
車通勤  可(ただし専用駐車場はありませんのでご理解ください)
昇給  あり(介護福祉士になると時給1110円へUP
選考基準・プロセス  面接等の上、採用を決定します。
求める人物像  自分で目標を立て、実行できる人

 

その他 趣味や特技などあれば、介護に活かしながら仕事をしてもらえます。グループホームは、チームワークにより成り立っています。ひとりでは出来ないことも、皆で知恵や能力を出し合って進むと笑顔が生まれます。やる気が最も大切です。最初は教えてもらう立場でも、経験を積み、教える立場になり、リーダーや契約社員として活躍できます。

実際に見学してみたい、または相談・応募を希望される方は、下記の電話番号・お問い合わせフォームよりお願いします。

就職相談担当 影山
就職相談担当 影山


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